そういえば、
わらび餅を食べたいなぁと、思っていた。
巣鴨の、地蔵通り商店街。
暇すぎる日に、ふらりと向かう場所。
特別近くに住んでいるわけではない。なのに、電車に揺られ、ひとり向かってしまう。絶対に美味しいものに出会えるって、信じているから。
着いてからの流れは、決まってこうだ。
巣鴨駅から、地蔵通り商店街まで直行する。
とげぬき地蔵尊で有名な高岩寺を参拝。しっかり、丁寧に、参拝。
出店で「幸福だんご」というお団子を、一本いただく。お寺の壁に寄りかかりながら、もぐ、もぐ、もぐ。
お醤油の味が、濃すぎず薄すぎず、ちょうどいい。本当に幸せな気持ちになるから、「幸福だんご」と名付けた人は天才だと思う。
「ごちそうさま」と串を返したら、いざ、始まるのである。
美味しいもの探しの旅。
幸福だんごは、私の中で「巣鴨の前菜」である。
これより美味しいものを、探すのだ。
小道を歩きながら、それよりもう少し細い小道を覗き込む。だいたいこういうところに、「名店」は潜んでいる。
あった。ただならぬ雰囲気を醸し出しているお店。
その名も「台湾小菜料理 台湾」。大胆な店名。アタリの予感。
思ったよりも小さなお店だった。きょとんとした顔をしたおばちゃんが、出迎えてくれる。一言二言交わす。おそらく、台湾の人だ。
台湾料理といえば、「魯肉飯(ルーローハン)」。これに決めた。
美味しい。よく煮込まれたお肉が、食べやすい大きさでゴロゴロとご飯の上に乗っている。柔らかくて、ほろほろと口の中で溶ける。煮汁が染み込んだ白米が、これまた罪な美味しさ。
それにしても、お店のおばちゃんの視線が気になる。
ふと顔を上げると、こちらを見つめている。『美味しいです』と私はニッコリする。「そうかね」と言うおばちゃんは、何だか恥ずかしそうだ。
大きなどんぶりを、食べきった。ふぅ、美味しかった〜、と思ったら、おばちゃんが目の前にいた。
「お茶、いるね?」
『あ、まだあるので、大丈夫です』
「じゃあ、杏仁豆腐、いるね?」
『・・・えっと、じゃあ、いただきます』
杏仁豆腐、サービス・・・?
・・・じゃなかった。おばちゃんの向こう側に、しっかりと「杏仁豆腐 400円」の文字が見えた。おばちゃん、会話の流れ、上手すぎるって。
そんでもって、でかいよ。杏仁豆腐。
おばちゃんの視線を感じる。はち切れんばかりの胃の在り処を感じながら、ちゅるちゅると流し込む。
完食。美味しかった。
ただ、胃は破裂しそうだ。
「美味しかったね?」と満足げなおばちゃんに1,200円を支払い、外に出る。
冗談じゃなく、食べすぎて吐きそう。大学生みたいな自分に笑う。
うっぷ、と、お腹をさすりながら来た道をゆっくりと戻る。
電車に乗る。ゆらゆらゆら。
あー。
わらび餅を、食べに来たんだった。