<more challenging>のニュアンス
週に1〜2回のペースで続けているオンライン英会話のレッスンで、珍しく真面目なトーンでいつもより少し踏み込んだ話をしたら、なかなか充実感があって良かった、という話。
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普段のレッスンでは、地元のおすすめスポットの紹介とか、自分の趣味のこととか、比較的話しやすく軽いテーマでおしゃべりするのだけれど、その日はちょっとだけ違った。
トークテーマは「Life-changing」。自分の人生がいつどんな風に変わったか、昔と比べて今の自分はどう違うかについて話し合う、というもの。
ちなみに、その日一緒にレッスンを受けていたAさんは、何度もオンラインで同じレッスンを受けていて、すっかり顔馴染みだ。直接お会いしたことはないけれど、お互いに留学とワーキングホリデーという次のステップに向けて英語学習に励んでいることを知っているため、私は彼女に対して勝手にうっすら仲間意識のようなものを抱いている。
同じくお馴染みのフレンドリーなネイティブ講師・Bが、私たちに<Is your life easier than before?>と質問を投げかける。すると、Aさんも私も若干苦笑いを浮かべて首を振りながら、<No, it's harder than before.>と答えた。嘘でも"easier"とは言えなかった。歳を重ねれば重ねる程、何だか色々複雑に、難しくなっているような気がするのだ。
そこから、なぜ・どのような意味で"harder"なのかを掘り下げて話すことになると、「昔と比べたら、将来のことをずっと深刻に考えるようになった(意訳)」とか、「自分にとってより良い生き方を模索してるけど、答えはなかなか見つからない(意訳)」とか、そんな風に、各々の気持ちを吐露し合った。
大前提として留学生活を楽しみに思う気持ちはあるし、海外でやりたいこと・叶えたいこと・試したいことが根底にあるのだけれど、正直、「留学すればこの先きっとうまく行くだろう」とか「留学こそが私が幸せになる方法だ!」みたいな楽観的な考えで海を渡る訳じゃなくて、これが最善の道という確証は何処にもない。恐らく誰だって、きっと画面の向こうのAさんだって、少なからず不安な気持ちはあって、アレコレ悩みながら、それでもやってみなければ分からないから、可能性を信じて挑戦するのではないかと思う。
講師のBは私たちの話を一通り聞くと、うんうんと頷きながら、「今、新しい挑戦をしようとしてる君たちの人生には、<harder>より<more challenging>という表現がふさわしい。<harder>はどちらかというとネガティブな印象だけど、<more challenging>はもっと前向きなニュアンスだ(意訳)」と笑った。
少し前の私なら、「いや、"harder"としか言いようがないくらいシンドイです!!!」と思ったような気がする。けれど、しゃがみ込んだ場所からなんとかもう一度立ち上がることができた今、<more challenging>という言葉を聞いたら、なんだかストンと、とてもしっくり来た。ネイティブでなくても、なんとなく分かる、<harder>とのニュアンスの違い。不思議なことに日本語に直さない方が感じ取れる気がする、絶妙なニュアンス。<more challenging>な人生を、丸ごと楽しみ味わっていこうじゃないか!という気持ちになる。
そして、その日のレッスンは、「この先の海外生活は、間違いなく、君たちにとってまた一つの大きな<Life-changing>になるはずだよ」というBの言葉で締めくくられた。
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まだまだそこまで流暢に喋れるわけではないし、知らない表現も多いので、気軽に話せる話題での会話の練習も勿論ためになる。だけど、たまには今回のように、ちょっと一歩踏み込んで、普段見せないような心の内側を分け合うような会話もしてみたい。私は元々そういう人との対話が好きだし、それは使う言語が日本語だろうと英語だろうと関係なくて、会話の内容や濃度によって充実感は随分変わるのだということに改めて気づかされた時間だった。