3歳の子が教えてくれた大切なこと
Hちゃんは確かアートスタジオに通い始めて2年近くなると思う。
感じたことを素直に言葉で表現する。よく考察するし、表現力も集中力も高くて、いつも感心している。
そんなHちゃんにたまについてくるYちゃんはまだ小さいけれど自分もやりたい。落書き用の紙やクレヨンを渡すと喜んで隣でお絵描きをしていた。
今年度に入って、もうすぐ4歳になると言うことで、晴れてYちゃんも一緒に参加するようになった。
いつも隣で見ているだけのYちゃんが、自分の席や道具が準備されていて、嬉しさを噛み締めながらも、得意げに椅子に座ってスタンバイしている様子は、なんだか込み上げるものがあった。
今日はそんなYちゃんに改めて気付かされた大切なことを話したいなと思う。
7月のアートスタジオは、「あわ と仲良くなる」というテーマのもと、泡の写真を見て絵を描いたあと、シャボン玉液と絵の具を合わせたもので、泡の模様をつけていく。
泡がぶくぶく膨れる様子が面白くてとても楽しい上に、ついた模様がとても美しい。
色はどうやって決めるかというと、単純に好きな色ではなくて、いろんな水の色を想像してみる。
透明、水色、青、緑、オレンジ、黄色、紫。
みんなに聞いてみたら、いろんな色が出てくる。
そうなのだ、水にはいろんな色がある。いや、何にもないのだけれど、いろんな色になれる。
だから、みんなが思う水の色を想像して、絵の具を混ぜて作っている。
みんな微妙に違った色になるから美しい。
出来上がったこの画用紙をみんなの海と見立てて、乾かしている間に、この中にいそうなものを作っていく。
アートスタジオには、「そざいボックス」という箱があって、色んな種類の紙やセロハンの端くれが入っている。1歳前後〜4歳ごろまでの子たち対象のプレこどもアートスタジオでの遊びの跡の紙も入っている。
ここでYちゃんの話に戻るのだけど、Yちゃんは最初そざいを使って一生懸命何かを折ったり貼ったりして作っていた。
お魚とかクラゲとか言っていた。
その目がとても真剣で、どんどん作っていく。
出来上がった生き物たちは、先ほどの泡で作った画用紙に貼っていく。
みんなクラゲや亀、イルカやわかめなんかを作って貼っていき、どんどん画面が出来ていった。
Yちゃんはというと、作った大きな何かを貼った後に、泡の画用紙を折り曲げて包んでいった。
あれ、泡見えなくなっちゃうな?と思ったけれど、Yちゃんの目を見たら真剣そのもの。
大人はきっと、せっかく作ったのにって思ってしまう。
勿体無いな、絵が見えなくなってしまうな〜って。
だけど、その時のYちゃんの目はそんなこと言わせないよオーラがあったのだ。そして出来上がった作品が、こちら。
これは、クラゲなのだそうだ。
そう言われると、なんだかクラゲの色合いとか透明感とかそういうものも感じる。
作品を作り終えると、みんなの作品を見て回る時間を設けている。
Yちゃんは、色んな子たちに自分のクラゲを見せて回った。目を輝かせて、自分の作品をプレゼンしてる様子や、周りの年上の子たちも真剣にそれを聞く様子を見て、胸が熱くなる39歳の私…。
本当にこういう時間が大事なんだよなと。私はアートを通して、こういう時間や経験を提供したいんだなと再確認したのだった。
ついつい大人としては完成品や着地点を先に見据えがちで、目の前の子どもの今を見れてないことがある。
私だって、油断するとそうなってしまうこともある。特に自分の子どもに関しては。
もちろん、困っていたり、行き詰まっている子には声かけや誘導は必要だと思う。
それが必要かどうかを判断するのは、真剣な目やオーラ。これをいかに感じ取れるか、このセンサーを大人は鍛えるべきだなと思う。
そしてこのYちゃんの自己肯定感の高さは、「今日のYちゃんはすごかった。集中してどんどん表現していたね!」と声かけするお母さんの言葉でも納得。とてもセンサーの感度が高い方なんだと思う。
こんな風に、子どもたちと関わっていると、学ぶことや心を突き動かされることが多々あるから、やめられないんだよな〜。