ラブラブに保つ秘訣が分かる!?「聖なるズー」のあらすじ・感想・レビュー
概要
著者:濱野ちひろ
発行年:2019年
受賞:2019年第17回開高健ノンフィクション賞
あらすじ:動物を性愛の対象として過ごしている人たちの物語。長年恋人からDVを受けた著者が、「愛とは何か」を探るために、動物を性愛の対象とする人たちへの取材を記録したノンフィクション作品。
「聖なるズー」の感想・レビュー
尊敬する作家・岸田奈美さんがおすすめしていたので、読んでみました。
この本は、長年DVを受けてきた著者が愛とは何であるかを知るため、動物を性愛の対象とし、対等な関係性を築こうとしていく方々を対象として研究した結果をまとめたドキュメンタリーです。
読んでみてまず初めに感じたのは、動物を性愛の対象とする人が結構な数存在することへの嫌悪感でした。
ただ読み終えた後、この初めの印象は、覆されました。この本で描いている人たちは、AVやエロサイトでたまに見かける「獣姦」を行うような人達とは全く異なります。
この本で描くのは、動物を本当の恋人・結婚相手のように扱い、共に過ごしている人達の話です。このような人々のことをこの本の中では、ひとくくりに「ズー」と呼んでいます。
この本を読んで最も学びになったことが、「人も動物もそれぞれのパーソナリティの関係性によって、愛が保たれていく」ということです。
パーソナリティとは、直訳すると人格や個性といった意味ですが、人間にはもちろん、動物にもパーソナリティがあります。
「ズー」たちは、動物のパーソナリティに惹かれ、そしてまた動物たちもそのパートナーである「ズー」のパーソナリティに惹かれていると考えています。私自身は、動物と触れ合っても動物のパーソナリティを感じたことがありませんし、動物が人間のパーソナリティに惹かれることがあるのかについては、疑念が残りましたが、人間同士の恋愛に関しては、かなり共感できる部分がありました。
人間同士の恋愛関係においても、付き合う時間が長くなるにつれて新鮮さがなくなったり、けんかをするようになったり、四六時中好きって思うことは難しいですよね。
私自身も、付き合って時間がたつとささいなことでいらいらしたり、飽きを感じたりすることがあります。
ただ、付き合った当初は、相手の人間性や外見・雰囲気、つまりはパーソナリティをお互い好きになって付き合っているはずです。付き合っていくうちにお互いの関係性や周りの環境の変化により、パーソナリティは変化することもあります。そこで、変化した、あるいは自分のパーソナリティが変化している中で、相手のパーソナリティの変化(あるいは不変)が嫌になってしまうと、飽きが来たり、嫌いになってしまったりすることがあるのです。
つまり、恋愛を長続きさせるということは、「お互いのパーソナリティの変化を楽しむこと」であるといえます。
このことを踏まえて、この本の主題でもあった「愛とは何か」について、考えてみました。恋愛の意味での「好き」は、「見た目やぱっと見の印象、感じの良さ」で感じるもので、「愛」は、「好きという段階を一歩先に進み、共に生活していくパートナーとして、お互いのパーソナリティの変化を楽しめる関係性を築いていく」ことなのではないかと思います。
余談ですが、かなーり「セックス」という単語が出てきます。1ページに3回くらい!「愛」を研究するにあたって、セックスなしでは「愛」は語れないのですねきっと。この「セックス」についても興味深く、「ズー」達は、パートナーである動物達からの誘いを受けて性行為を行う場合が多いそうです。確かに一方的な思いで性行為をすることは、虐待にあたりますから、そうでなくてはいけないと思いますが、果たしてどこまで動物の思いをくみ取れているか、取材に対してどこまで正直に答えているか、誰に取材をしているかによっても結果がかなり変わってきそうです。
追記
①性愛の対象としている動物は、9割近くが、犬と馬(ロバ含む)であり、少数派として、猫や豚・羊などだそうです。確かに犬とか馬は人間と意思疎通できる印象があるため、納得ですね・・・!
②この本は、DMMブックスで100冊まで半額セールをしていたので、電子版を半額で購入して読みました。amazon kindleやhontoも使っているのですが、これらのアプリのが検索機能があって便利です。