ひゃっぴきいっしゅ 入門編 デザイナーズノート
ひゃっぴきいっしゅは、小さな子から大人まで誰でも楽しく遊べるカルタゲームです。
そんなひゃっぴきいっしゅを僕がどんな気持ちで作ったのかを書き残しておきます。
コンセプトを考える
うちには小さな娘がいます。当時4才。まだ字が読めませんでした。
そんな子にどんなゲームがいいだろうと考えていたとき、どうぶつしょうぎのように、既存のゲームをもっと簡単にしてあげられないかと考えました。
そこでピンときたのが、百人一首です。
百人一首を使ってプレイされる「競技かるた」はとてもすばらしいゲームです。
しかし、句を覚えないとその面白いゲームを体験することができません。
映画「ちはやふる」のようなスピードで戦えるようになるにはとてもとても時間がかかります。
それを、誰もが楽しく遊べるように。私の娘でも遊べるようにしたい。
そう思って、誰でも遊べる百人一首を作ろうと思い立ちました。
ちなみに、私は句を全部覚えていません。
小学生や中学生のころはいくつか覚えてそれっぽい遊びはしていました。
それもあって、自分自身、競技かるたの気分を味わいたいという気持ちも持っていました。
ゲームシステムを考える
では、どうやって誰でも遊べる競技かるたにしようかというところが問題です。
そもそも、競技かるたの面白さとはなんでしょうか。
それは、決まり字にあると思いました。
句が読まれていくにつれ、どの札がとれるようになるかだんだんと絞り込まれていきます。
そして、ついに1枚の札に決まったとき、手を伸ばしてその札を素早くとるのです。
そこで、いろで絞り込み、どうぶつで取る。という2段階を踏むことでその面白さを表現しようと思いました。
きいろい…(ライオンかな…?とらかな…?)
とら(とらだーッ!)
みたいな感じで、競技かるた的な面白さが再現できるのではないかと。
このとき、すでに「ひゃっぴきいっしゅ」っていうタイトルがわかりやすくてよいなと思っていました。
早速、厚紙で作って遊んでみたところ、まさに競技かるたの面白さに近いものができたと思いました。
では、どこまで厳密な競技かるたにするべきなのか。というところも考えなければなりません。
ターゲットは私の娘です。
まずは、みんなで楽しく遊べるように普通のカルタを参考にルールを作りました。
そして、やはり、1対1で対戦できる競技かるたのルールも作ります。
その娘に競技かるたのルールを遊ばせるために、いくつかけずったルールがあります。
自陣お手つきアリ、というルールは理解が難しそうですし、ゲームがぐちゃぐちゃになる恐れがありました。
空札(読まれない札がある)も、そもそも全部の句を覚えなくていいというコンセプトに反しますので外しました。
細かいところも簡素化し「ふたりでしんけんルール」としました。
バランスを調整する
いろとどうぶつをどのように配置するかを考えました。
決まり字の絞り込みを少し体験できるように、「しろ」と「しろとくろ」を入れました。
1字決まりは外せない。百人一首にある1字きまり「むすめふさほせ」の7つ。その「む」でもあるし、基本的な色でもある紫を1字決まりにしました。
これに「だいだい」をいれて、8色にしました。
これだけではつまらないと思って、カメレオンだけ3匹つくっていろから読むようにしたり。
ちょっとひねりを利かせてみました。
そのあたりを考えつつ調整しました。
娘にあそんでもらったところ、
あおいどうぶつはぞうさんだけだから、「あお」と読むだけで取ってくれました。
もちろん、そういうふうになるんだよと説明はしましたが、ちょっと遊んだだけで理解できたのはとてもうれしかったです。
また、絵を見ただけで「あおいぞう」と読めることもわかったので、読み札にも絵を入れました。
すると、どうでしょう。読む方に夢中になったのです。
字の読めない娘が、読み手になれるというのにはとても感激しました。
たまに間違えるのも面白く、娘に読んでもらうのは、予想以上に楽しいものでした。
ほかにも、かどを丸くしたり、読み札と取り札がまざってもすぐに分けられるように背面の色を変えるなど細かい調整をしました。
こうして、誰でも遊べるいろとどうぶつの百人一首が出来上がったのです。
絵を決める
絵をどうするか。悩みました。誰かに頼むか自分で書くか。
最初はとあるフリー画像を使っていましたが、もっと味のあるものがよいなと思っていました。いくつかテストで書いてもらったりしたのですが思うようにいかず。自分で書いてみることに。
しかしこれはいばらの道。なかなかかわいくならない。
いくつかの動物を、自分でも許せる範囲になってきたので取り急ぎこれで出そうということにしました。
その後も特に苦労したのは、あしか、アルマジロ、カピバラ。
あしかの特徴を出そうと横向きにしたけどどうもよくない。
カピバラって微妙なバランスで成り立っていて、カピバラに見えない。
アルマジロもなんかうまくいかなくて試行錯誤繰り返しました。
これはボツになった絵ですが、これは、かなり良くなった後。
発売する
発売して1年ほどになりますが、小さなお子様を持つパパやママだけでなく、幼稚園や保育園、園外保育、療育、老人ホームなど幅広く活用いただけているようでとてもうれしく思っています。
無限に遊びすぎるので禁止になった家庭もあったという話や、感謝のお手紙をもらったり、本当に感謝しています。
絵もかわいい!と評価を得ることもあり安心しています。
ただ、決まり字というのはとても分かりにくく、実際に遊ばないとわからないようでした。
字が読めなくても遊べる。どうぶつの絵がかわいい。色が原色でよい。といった知育的な側面から買っていただけてる印象です。
そのあたりも踏まえて、もっとみんなに遊んでいただけるように活動していきたいと思っていますので、今後も楽しんでいただければうれしいです。
余談ですが、ひゃっぴきいっしゅとうたいながら、札はが30枚しかありません。
しかし、100枚にすると、とても子供が遊べる量ではありません。
なので、「入門編」とつけてお茶を濁すことにしました。
いつか、拡張をだして100枚になるとよいなと思いつつ。