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2024年 最新インバウンドの展望

2023年に大幅に回復したインバウンドは、2024年も続伸しています。
特に、アジア圏からのリピーターが増加しており、よりコアな需要も見込まれています。その中で、今後の消費動向や多様化するニーズについて情報が欲しい方も多いのではないでしょうか。

今回は、「総合商社のインバウンド勉強会」の内容をレポート形式で要約。大手旅行代理店の分析チームを講師に迎え、2024年9月時点の「最新インバウンドの展望」について知見を聞き出しています。数字に関しては独自データですが、今後に活かせる内容なので、ぜひご覧ください。

1. インバウンド市場の現状

  • 力強い回復: 2024年はインバウンドが復活し、7月単月では過去最高の329万人が訪日。6月、7月と継続して増加している。

  • 国別内訳: 中国がトップだがコロナ前水準には未達。上位5カ国(中国、韓国、台湾、香港、タイ)で全体の8割を占める。

  • 今後の期待: 中東諸国からの旅行者の増加が期待されている。

  • 年間予測: 2024年1月〜7月のペースでは、今年度は3,700万人に到達する見込み。中国を除けば、2019年同期比で概ね増加。

2. インバウンド市場の課題と可能性

  • 航空便: コロナ前と比べ航空便は約9割回復しているが、関西空港の中国便は5割にとどまる。

  • 伸び悩みの懸念: 航空便そのものの空席キャパが少ない。現状では日本人の海外旅行の回復遅れによる空席をインバウンド勢が埋めている状況。今後、さらなるインバウンド増加には航空便の拡充が求められる。日本人の海外旅行を抑制しての座席確保は非現実的だからだ。

  • 消費額の重要性: 訪日客数だけでなく、消費額も重要。一例を挙げると、韓国は人数では1位だが、消費額では4位にとどまる。

  • 中国人旅行者の消費動向: 訪日客数はコロナ前の1.1倍だが、消費額は1.7倍と大幅に増加。

3. 旅行消費の内訳と傾向

  • 消費の内訳: 飲食費は2019年対比157%、買い物は170%と増加。

  • 1人あたり消費額: 平均238,700円。

  • 国別消費傾向:

    • 飲食費:香港、台湾、アメリカ、韓国は1日あたり8,000円台。

    • 買い物:中国は1日あたり20,000円、香港は18,000円。

  • 円安の影響: 2022年3月以降、台湾、香港、アメリカからの越境EC利用が増加。

  • 途上国の成長: 途上国の経済発展は、インバウンド需要増加の潜在力を持つ。

4. 訪日外国人の飲食ニーズと課題

  • コンビニ需要: 夜の娯楽が少ない日本では、コンビニでの消費が増加し、部屋飲みなどに繋がっている。

  • 飲食店のニーズ: 日本食への関心は高いが、特に人気なのは「肉」。ブランド牛が人気。

  • 人気料理: 寿司、ラーメンも人気。ラーメンツアーなども存在。

  • 地域性: 大阪では「粉もの」が人気。

  • 食事場所の決め方:

    • アジア系: 訪日前、インフルエンサーやSNSの影響が大きい。

    • 欧米系: 当日決定、日本人からの情報・紹介を重視。

    • 欧米系: レストラン利用が多いが、コンビニやスーパーも活用。

  • 飲食店側の課題: 多言語対応、メニュー写真、ハラール・アレルゲン情報の事前提供など。

  • 大阪の事例:

    • 黒門市場: 魚介類をはじめ、提供メニューの高価格化が問題。欧米人は受け入れるが、中国人は木津市場へ流出。

    • 立ち飲み・コアな個人店: 外国人からの需要があるが、店側の受け入れ態勢が不十分で機会損失に。

5. その他のインバウンド関連情報

  • 百貨店のレストランフロア: 昼夜問わず外国人客が多い(難波の大阪髙島屋では8割)。

  • 調味料への戸惑い: 多様な調味料に戸惑う外国人観光客が多い。

  • リピーター: アジア系はリピーター率が高く、日本への理解が深まることで、よりローカルな体験を求める傾向がある。一方、欧米系はリピーター率が低い。

  • 大手旅行代理店の視点: 円高によるインバウンドへの悪材料は限定的。海外での物価高の方が深刻なので、日本の強みは担保される。

  • 言葉の壁: POCKETALKの導入実績は増加。店舗で使うにはシェアのしやすさが重要で、スマホアプリは実用的ではない。ただし、言葉の壁よりも歓迎の姿勢が重要。

まとめ

2024年のインバウンド市場は、コロナ禍からの力強い回復を見せていますが、さらなる成長には航空便の拡充や、外国人観光客のニーズに合わせたサービス提供が求められます。特に、飲食店においては、多言語対応、情報提供、そして何よりも「おもてなし」の心が重要となるでしょう。

2024.10.10 SADA


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