古くなる教育は手放す
『では、講師研修会を始めます。今回のテーマが、アクティブラーニングの進め方です。ご一緒に探って参りましょう。
端的に申しますと、今や日本全国、混乱した状況があるわけです。なぜなら──』
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こんにちは。フジミドリです。仕事について種観霊します。種観霊とは道術用語です。
人体中央の仙骨を意識なされば、何方も直ぐ頭脳回路と違う、中真感覚が発露されます。
今回は、私が開催した講師向けの研修会を、私物語に再構成してみました。
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『何故、混乱しているのでしょうか。
先生は教えないで、生徒同士で教え合うアクティブラーニング型授業が当たり前、という学校もどんどん増えてきました。
ところが、一方向な授業が退屈なため、生徒はお喋りしたり居眠りしたり、他の科目を内職したりという学校も、未だにあるのです。
関西圏の方が進んでいます。しかし、学校間の格差は歴然とあり、教師の技量もバラツキがあるのです。それで──』
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ふぅ。スタートしたぜ。緊張した。生徒じゃなくて講師の相手だからな。ずらり30人。ようやく観察する余裕が出てきたよ。
どの組織も同じ。2割と8割の法則が働く。新しい流れに即応する1割。頑なに変わろうとしない1割。残りはどっちつかず。
腸内の善玉菌、悪玉菌、日和見菌が同じ比率だもんね。大自然の摂理か。今ここで、オレの話を聞く人もピタリ同じ比率だぜ。
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もちろん、そうは言っても一人ひとりが別の個性。比率の中でも温度差はある。ならば、誰に照準を合わせて話せばよいだろう。
オレは中真を意識する。それから、教室にいる全員の中真を意識して、最後に全体の総和である場の中真へ意識を絞り込む。
オレの中真から場の中真へと波動が流れる。言葉はその流れに乗っていく。オレは空っぽの器だ。心地よい波動が流れるゼロの器。
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『ですから、今やこの国は、教育改革の真っ只中、混乱の極限ですね。生徒や親御さんにとって、受難の時代と言えるでしょう。
実は、私たちにも矛先が突きつけられています。教師はもう必要ありません。AIの時代なのです。今回の騒動でバレました。
ティーチングからコーチングへ。壇上の賢人は去れ。水先案内人よ来たれ、そういうパラダイムシフトなのです──』
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あはは~煽ってるぜ。挑発的。いいのかね。喧嘩売ってんのかオレ、みたいな。
キミたち、もう要らない。変われないなら、辞めちまえ。でも、オレは大丈夫さ。
そう聞こえちゃうぞ。
たーしかに確かに。反発する波動が漂うぜ。さぁ、中真を意識して深呼吸だ。
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怖がることはない。
決まってるのさ。
もちろん、驕り高ぶるのは違う。使命感でもない。思いを済ませるためだ。前世の業を手放して、自由自在の道を歩むため。
この言葉を伝えるために生まれてきた。安心して堂々と語ろう。プラスでもマイナスでもないゼロで語れ。オレはゼロの器だ。
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『私たちは今、教育の仕事に携わっておりますが、そもそも教育という言葉は、エディケーションに付けた訳語に過ぎません。
福沢諭吉さんは、別の訳語を主張なさっていたとか。なぜなら、エデュケイトの語源は、導き出すという意味だからです。
教育が教え育てる。語源は導き出す。如何でしょう。印象が違ってきませんか──』
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教育するのは、教え育てる在り方で、その在り方が、教え育てられなければならない生徒を映し出す。うーん。ややこしいぞ。
感覚ならスッと浮かぶ。でも、言葉にするとなんか違う。あ。わからせようと焦っていたか。こいつらわからねぇって在り方だ。
ふうぅ。中真を意識してゼロになろう。心地よい。やれやれ。笑っちまうぜ。
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『私たちが、教え育てようとする姿勢で生徒に接しますと、生徒は教え育てられなければならない存在として取り組むのです。
一方、私たちが導き出そうとする姿勢で接するならば、生徒は自分の中に全てがある存在として取り組めます。
言葉に出さなくても、声の調子や手の動き、顔の表情、つまりノンバーバルコミュニケーションで伝わります。以心伝心ですね──』
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お。なんかみんな、オレの世界に入り込んでくれている。一体感が取れて心地よい。
こうなると、仕事してるのか遊んでるのか、わかんないね。フワッと軽く活き活きと。
あはは~有頂天になる。オレってスゴいぞ。誇りたい思いが頭に浮かぶ。
でも、中真はそんなオレを凝っと観ている。 この思いを味わい、手放すために。
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得意気に語るオレ。熱心に聴き入る30人の塾講師。双方を観詰めるオレの中真。
自分と相手と中真。三つの立場を感じ、意識はスッと広がる。本来は何時でもこの状態。
これまで、肉体を自分と思い込んできた。
オレは今、三つの立場が背景とする法則だ。無限に広がる。何もない。澄んでいる。
今ここで。どこでもない。原初から在った。永遠にある。ただ、このままでよい。
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『さて、これから在り方について考えます。方法論ではありません。在り方です。
これまでの私たちは、何を学ばせるか、どう教えるか、やり方を追求してきたのです。
しかし、アクティブラーニングの根幹は在り方なのです。在り方を見直さなければ、表面的な真似事で終わってしまいます。
では、在り方とは何でしょう。
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具体例を挙げますね。この生徒は担当した当初、数学が大嫌いで無気力に見えました。
文系なのに国立大志望だから、共通テストの数学で高得点が必要です。前の担当は、とにかく頑張れという従来型の指導でした。
そこで私はどうしたか。好きなものを訊き出したのです。進撃の巨人ってご存知ですか。
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驚きますね。語り始めると、俯き加減だった姿勢が反っくり返って、囁く声は自信に満ちた口調へ変わり、まるで歴戦の評論家。
物語全体を俯瞰して的を射た要約。伏線の細部に至る鋭い分析。緻密な論理展開。
数学に向かう姿勢と大違い。在り方が変わりました。本来の能力が発露されたのです。
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それから、数学と進撃の巨人に対する在り方の違いについて、自覚を促しました。
本人の自覚が原動力なのです。在り方を見直せば、脳の情報処理は最適解へ変わります。
好きな何かに夢中な時は、誰でも本来の力が発露されます。楽しく自然で心地よい。
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そして入試直前、最後の授業です。
「変われば変わる。キミは今や数学オタクだけどさ。初めの頃は大嫌いだったもんな」
「いやいや。先生、ナニ言ってんすか。オレは初めから得意っすよ。超楽しかったね」
脳が記憶を改竄したのです──』
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ふぅ。伝わったかな。オレにとっては自然。三十年で三千人か。よくやったよ。
でも、初めて聞いたこの人たち。
きっと半信半疑だろうね。
勉強して、苦しい時間を乗り越えるから価値があり、一流大卒はステータスとなる。
そういう評価で、生きてきた人たちだから。自己認識が崩壊するかもしれない。
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もちろん、オレが正解じゃない。
そもそも正解は一つという教育が、現代人の不自由を生み出した。一つの正解を求めて、地球人は未だに戦争をやっている。
中真を意識すればよい。
人智を超えた叡智が浮かぶ。
それだけでいいのに。
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オレの心で思いが浮かぶ。溢れて流れ出る。翻弄されそうだ。哀しみと憂い、使命感に燃える熱意、そして明るく大らかな喜び。
意識の表層は、荒れ狂う思いの大波で、揺れ動いて舞い踊り、さらには弾け翔ぶ。
ここが正念場。中真を意識しろ。息は吐いて吸う。外界へ向かう思いが、仙骨に吸い込まれていく。さぁこれでいいぞ。
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この思いを手放すために、敢えてこの仕事を選んで生まれてきたオレだからね。
この人たち、この環境、そしてこの時代を選んできた。だから、このままでよい。
手放すとは中真に収めることだ。掴んでいた意識を緩め、中真へ向ければ事足りる。
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『纏めましょう。教え育てる教育から、本来の能力を導き出すアクティブラーニングへ。その立ち位置をお伝え致しました。
何をどう学ばせるかというやり方ではなく、お互いの在り方に焦点を絞り込むのです。
簡単ですよ。好きなことに熱中する姿勢が、生徒の最適な在り方ですから──』
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ふぅ。終わった。偉かったぞ、オレ。よく乗り越えたぜ。自分を褒めないとね。
オレ独りの力じゃない。中真を意識して発露された霊力。人智を超えた法則の力だよ。
地味でいいの。細やかな達成だ。路傍に咲く小さな花のように。これでも精一杯さ。
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ミスはある。言い残したことも。でも心配ないよ。眠っている間に伝わっちゃう。意識の世界は時空を超えているものね。
このままでよい。そう理解すれば、そう思える状況になる。人生は決まっている。大事なのは死後の世界だからね。
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あぁそうか。そういうことだ。やっとわかったよ。この人たちはオレ。過去世のオレだ。
思い出す。生きて来て、イヤなこともあったけど、全て過去世でオレがやらかした。
その時、迷惑を掛けたお相手は、どこか他の星か、霊界の高い次元にいらっしゃる。
オレを許してくれるのか。
何故なら、今オレが許すから。
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あぁ。動いている。意識が躍動する。現実と折り重なって流れている。
肉体世界は映画のように進む。オレと教室にいる人たち、そして場の状況は、決まってる通りに映し出されていく。
しかし、その背後で意識は動いている。見えない次元、聞こえない世界、触れない波動。
死後の世界で使うのは意識だけ。知識も技能も経験も消えてしまう。意識しか使えない。
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今ここで意識を使う。現実世界は決まってるから、そのままでよい。消えてゆく世界。
意識は消えない。永遠不滅。今ここで使え。使い方は解っている。その在り方に戻れ。
あぁ、心地よい。
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お読み頂き、ありがとうございます。
仕事の種観霊でした。お役に立てたら嬉しく思います。
次回、4月17日午後3時です。
西遊記は明日の午後6時──