豊かさの基準
考えると人生の豊かさなんて、人によって違うのかも知れない。
この年になってやっとそんな風に思うようになって、自分の生活を考え直したりしている。
元々、ブランド物や高級化粧品には興味は無いし、なんなら化粧品自体を買ったりしていない。
「化粧品を持って無いよ。」と若い頃に近所の人に話して、エ~という声の後言われた事は。
「今は良いかも知れないけど、年取ったら物凄く荒れて、シミだらけになって、大変な事になるよ、基礎化粧品だけでも使った方が良い。」
そうなんかー、と考えて、実は化粧品屋に行った時期も有る、でも買わなかったんだよね。
何故かって??だってさ高い物ばかり進めてくる、もう一寸安いのが良いと思って聞いてみる。
「あのー、もう一寸安いのって、この会社の製品で在りますよね??」とおずおずと言った。
「ああ、在りますよ、でもね、あーんな安いの絶対に良くないですよ、今薦めているのが良いんです。」と私の言葉は無視に近い。
「でも、このお店にも有るんですよね、安い奴。」こっちも譲らない、もうね譲らない世界ですよ。
「在りますけどね、お勧めしません。」言い切っちゃたけど良いの??と云うか何でそんな商品置いているの??
「高いんですよね。」と本音をポロリと言ってしまう。
「それでも、年取ってから肌がボロボロって嫌じゃ無いですか、今から良い化粧品を使っておかないと。」ブルータスお前もか、いや若しかすると、この人が近所の人を洗脳してる??
私としては、高い化粧品を買うなら、本が買いたい、男の人で基礎化粧品を付けてなかったから、年取って肌がボロボロって言うのも聞かなかったしね。(してもしなくても一緒でしょ)
今はその年取った状態だが、まあまあかな??英語ならそうそうって答えてる??
短大の頃はバブルが弾ける5秒前で、友達はブランド物を持っている人が多かった。
だから自分も欲しいとは思わなかったのは、私は私で本を買って愉しんでいたからだろう。
私の行っていた学校は制服が有って、黒ジャケットと黒スカートで登校する学校だった。
心の中で、『何時でも葬式に行ける服装やね。』と服を見ていつも考えていた。
幾らブランドが好きでも、カバンやブラウスくらいしか持ってこれないから、私などは羨ましさを感じなかったのかも知れない。
私の友達は、所謂いいとこのお嬢さんが多かったが、ひけらかすことも無かったし、本人は自分が豊かだという自覚は少なかったのじゃ無いかな。
結婚してから、夫になった人が、高級なものが好きだと知った。
例えば車だったら、諸事情から買うのを軽自動車にしても、ターボやスーパーチャージャー(今も有るのかな?)が良いと言う。
私としてはそれ程スピード出す気は無い、じゃあ普通の軽で良いんじゃない??と言うと、物凄い勢いで反論が返ってくる。
「車はタイヤでしか道に接地して無いんや、だからタイヤと足回りがええのが良い、ターボやスーパーチャージャーやったら、その走りに合わせた足回りに成っている、安全を考えたら絶対にそっちが良い。」
そうなんや、車って高いし、いくら化粧品買わなくても、そこに在るだけでお金が掛るもの。
家から出掛けるのに絶対に必要だとは言え、思ったよりも高い、でも子供も載せるのにと言われると仕方が無い。
出来たら安いのが欲しいけど、そっちがええんやろなと考えて最初の車を買った。
買ったと言っても、私は注文して居なくて、後でお金だけ払ったので、車庫に在った時には驚きモモノキ山椒の木って感じだったんですけどね。
まあこの車は私が免許取るまでに車庫に入って居て、私が乗るまでは夫が乗ったりしてたんですけどね。(彼も車は持っていたけどね)
考えると私もブランド品を持っていたんだな、グレードの高い車という名のブランド品をね。
短大時代の友達がブランド品を持っていても、グレードの高い車というブランド品を持っていても、それが豊かだったかな??
思いを馳せてみる。
今の時代、何処までも高い商品が有って、それがSNSで目に見える形で迫ってくる。
きっと、とんでもなく豊かな人が買うのだろうけど、それを買ったら自分が豊かになるかと言えば、そうでもない気がする。
我が元夫は一時期自転車にも凝って、家族は6人しか居ないのに10台以上の自転車を持っていた。
「これはロードレーサーやし、これはマウンテンやし、これはシティサイクルやから全然違うんや。」と言って、せっせと自転車を作っていた。
その時の彼は、きっとどれだけ自転車を作っても、自分が豊かだと感じられなくて、ずっと作り続けるループに入って居たのかも知れない。
こんな風な人を見ていると、人間が豊かさを感じるのって本当に難しいのだと感じる。
人間の欲望って際限が無くて、もっともっとと物が手に入れたくなる。
田舎に住んで、田舎の感覚で生きるのが豊かなのだという人も居る。
だけどね、移住するって言うのも、実はお金が掛る、そこで生きるために交通費が必要だったりすると猶更だ。
何処が豊かなのかという基準は人それぞれだけど、自分に基準さえ有れば流されないでいるのかも知れない。
この年になってやっとその基準が自分の中に出来てきたかも知れない。
遅いかも知れないけどね。