文字で魅せる音・におい・温度
先日、高嶋イチコさんの作品を校正させていただきました。その体験談をnoteに投稿してくださって、とても嬉しかったので引用させていただきます。
私から説明するより、ずっとわかりやすくまとめてくださっています。自分でも、私がやってるのってこういうことなんだ、って初めて理解しました(笑)。
文章を直すにあたって、「明らかな間違いを正す」「間違いではないが正確に伝わらない可能性があるものを、わかりやすくする」「間違いではないし、正確に伝わるものを、より読みやすくする」「文章としての味わいを深める」といった段階があると考えています。
校正で扱うのは、基本的に前の2つ。後ろの2つは補足的な作業で、どちらかというと編集者の作業に近くなるのかな、と。
イチコさんのnoteでは私の校正赤字も掲載していただきましたが、イチコさんの今回の作品は分量が短めということもあり、「明らかな間違いを正す」「間違いではないが正確に伝わらない可能性があるものを、わかりやすくする」という作業が不要でした。そのぶん、「間違いではないし、正確に伝わるものを、より読みやすくする」「文章としての味わいを深める」ためのコメントをお入れしています。
そのほか、メールでもいくつかやりとりさせていただくなかで、イチコさんは、「文字で表現する」ということに対して、とても真摯に向き合っていらっしゃる方なんだなあという印象を受けました。
私は漫画や映画、舞台、写真も好きなんですが、小説(文章)は、紙またはモニターなどの上に「文字」だけで表現するもの。これを「ビジュアルがない」とすることもできるけど、私は「文字という絵」「文字でつくるリズム」「文字という動画」と捉えるのが好きです。
フォントにこだわる、漢字か平仮名かカタカナかの表記にこだわる、改行にこだわる……いろいろあります。そういう、「文字をどう配置して、文章という一つの絵を仕上げるか」も、作品の面白さだよなあ、と。
イチコさんの作品では「一つ一つ」「ひとつひとつ」でリズムの違いをつくり、「入れる」「淹れる」で丁寧さの違いをつくり、表記の違いで行動・心情の差を表現されています。すべての人がこういうところにこだわるべき、ということではもちろんありません。ただ、自分が伝えたいこと、こだわりたいことを、文字だけでどう表現するか――書き手として、いろんなアプローチで探究されていらっしゃることを、私は文字から感じました。
文字なんて情報を伝達するツールでしかないんだけれども、なぜか、においとか、音とか、色とか、スピードとか、湿度とか温度とか、感じること、ありませんか。文字それ自体にも表現力がある。「ぽつぽつ」「ポツポツ」「ポツリポツリ」みたいな擬音語はもちろん、「この漫画がアツい!」と「この漫画が熱い!」でも、読み手に与える印象は全然違う。「君がいるだけで心が強くなれる」と「君がいるだけで、心が強くなれる」みたいに、リズムが変われば強調されることも変わるし。
とくにnoteはフォントをほとんど選べないので、一文字一文字をどう並べたらより正確に自分の思いを形にできるのか、こだわりがいがあるなあと思う。そのこだわりをお伺いすることで、校正をする立場でもよりいっそう、やる気が出ます。
さらに言うと、PCでもスマホでもモニター越しで文章を読むことと、紙に印刷された文章を読むこと、同じようでまったく違くて。紙になると途端に「勝負を挑まれている」ような感覚になって、気持ちが引き締まるのはなぜなんだろうね。伝わってくるものの熱量が全然違うんだよね。
モニターだと結構流し読みできるけど、紙に書かれたものをさら~っと読もうとすると、なんか罰当たりな気がしちゃって、読み飛ばせない。付喪神みたいに、文字にも神様が宿るのだろうか。彼らの、声にならない声に耳を傾けながら、私もエンピツと赤ペンを手に戦います。
さて、校正についていくつか言い訳をさせていただきたく。
・今回掲載いただいた赤字は、分量が比較的少なく時間のあるタイミングだったため、かなり丁寧に見させていただいたものです。
・分量とスケジュールにより、表記統一をチェック対象外とさせていただく場合があります。
・先日、校正会社の採用実技テストを受けましたが、不合格でした。プロの校正者にはなれないレベルの、あくまで経験3年の元編集者にすぎません。
・校正させていただいたことについて、かならずしも公表していただく必要はありません。また、こちらも許可をいただかない限りは校正させていただいたことに関して公表致しません。
以上、何卒ご了承いただければと思います。
最後になってしまいましたが、イチコさんのnoteからさらに引用していただいて、編集者としての先輩の方にもご紹介いただきました。ありがとうございます。
noteには編集・校正など出版業界の方が多い印象なので、私のようなひよっこがこんな活動をしているのも恥ずかしいという気持ちもあります。それでも、自分にできる最大限で取り組んでまいりますので、引き続き宜しくお願いします!