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組織サバイバルの教科書 韓非子|読書感想
あらすじ
中国の戦国時代の思想家韓非の書作「韓非子」は、人間の本性を弱さと捉えて組織の効率化と生き残りを目指しました。対局にある論語と対比させながら、それぞれの考え方の「強み」と「弱み」を洗い出し、現代の会社組織で生き抜くためにどのように活用できるのかを解説しています。
読書の動機
本屋で見かけて、組織で生きていくための戦略の参考にしたいと思った。
引用と感想
1 結果主義は人に優しい面もある
こうした徹底した結果主義というのは、実は人に優しい面も持っている。なぜならば、それ以外の要素ー出自、人種、性別などーで差別されてきた人材をすくい上げるちからがあるからだ。
韓非は、「恩賞」「厳罰」「名誉」という三要素によって共通の価値観をというレールをしき組織を一つにまとめようとしました。愛や情を排斥したシステムで、孔子的感覚で見ると、愛や情を排除した冷たさを感じるのですが、著者は人に優しい面もあると言います。日本の社会は、孔子的繋がりが昔から存在して、仲間として認められれば良い思いができるし、逆に認めれなければ排除されるようなことが、昔からあったように思います。その社会では、実力があっても、権力のある人から仲間と認められなければ冷遇された人もいたのでしょう。韓非の考えでいくと、そういう人たちが、実力で引き上げられます。それを優しさと表現する著者の優しさを感じました。私は女性なので、時には性別で損をしていると思う場面が全くないわけではありません。その立場から見ると確かに優しいと言えますね。
2 組織での立ち回り方
端的に言えば、周囲や下から見ると、「何を考えているのかわからない人」「手がかりのつかめない人」「つれない人」になれば、つけ入れられることはない。
韓非子の時代は戦国時代で、いつ誰に裏切られるかわからない時代でした。なので、このような考えになったのかと思われます。私自身は、会社組織で、心を許し合う必要はないと思っていて、韓非の考え方には少し共感が持てます。ここを目指すのか?とも考えましたが、それではあまりにも殺伐としていますね。参考するまでにとどめておきたいです。心を許す必要はないと思いますが、あまり周りを警戒しすぎても業務を遂行する上では弊害があるかもしれません。
3 「依存するのではなく、依存される側になる」
権力から身を守りたければ、「他に代わりがいない」という代替不可能性をみずから持って、それを押し立てていくのに如くはないのだ。
会社や上司がこちらに何らかの点で依存せざるを得ない状態にあれば、はっきりノーと言えるし、そもそも会社側が権力を乱用するのも難しくなる。
結局、自立や被依存こそ、理不尽な権力から身を守る強力な盾になる。そして、それこそが組織のなかで自由のかけらを手に入れる手段ともなるのだ。
いくら私心なく仕事をするからといって「いい人」になりすぎると、組織から使い潰されてしまう危険性が高まってしまう。「依存されていることは、権力を握っていること」だと心得て、かしこく駆け引きできるバランスが、そこには必要なのだ。
「依存する側ではなく、される側になる」というのは目から鱗でした。実は、私は人から依存されるのが好きではありません。それは、依存されて嫌な思いをしたことがあり良いイメージがなかったからです。著者は、組織で「自由のかけら」を手に入れるためには権力者に依存させなさいと言っています。今までの自分にはない視点で、考え方が変わるきっかけになりました。そして、現在の仕事の内容から、権力者に依存させることは可能な立場にいます。
権力が欲しいわけはなく、まさしく「自由のかけら」が喉から手が出るほど欲しい状態で、それを手に入れる方法が「権力者からの依存」であるならば、試してみる価値はありそうです。
終わりに(今後実行したいこと)
ささやかな自由を手に入れるために、こんなに壮大なことをしないといけないのか、という気持ちもありますが、自由の代償は案外大きいのかもしれません。
依存されることに慣れないといけないのですが、「権力者に依存させる」を実行してみたいと思います。