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【凡人の非凡なる徹底】最初の部下

私が事実上最初の部下をもったのは20代後半のころ。後輩の教育ではなく役職について数字を抱えるに至ったのは、勤める企業規模や組織形態にもよりますが、むしろ遅い方だったと思います。

そんな最初の部下だったのは、私の経験上、最も営業に不向きと感じた子でした。当時私が在籍していた会社は属にいうブラック企業。体育会系の学生上がりのような会社体制で数字に対するコミットだけを求めながら、離職率で言うなら1ヶ月で10人入れば1人になるような会社でした。1週間でトブ人が当たり前のような労働時間と環境で言うにも耐えない内容で3ヶ月いたら上出来、1年いたらタフネス、3年勤めたら怪物と言われるような会社。とりあえず営業なら数の採用が必要だったので採用されたような子でした。

まず、目を見て話ができない、こちらが少し詰めるとブルブル震える。アポの電話も活舌が悪く噛みまくるのでガチャ切りされるような感じで、見るからに気弱、営業に行ってもこんなやつ来させるなと怒られ、何度も謝りにいく始末。

オラオラ系の社員ばかりにもかかわらず、皆が私に同情しました。自分の部下たちもアレだけど、アレよりはマシだと。

言葉も酷いですが、本当にそんな会社でした。

私も正直かなり頭を抱え、そういった会社の人間だったこともあり、とんでもないくらいの叱り方・・・いや叱りではないですね。怒りをぶつけていたと今となっては思います。

だいぶ苦労しましたがなんとか電話をしてアポを入れられるようにはなるには至りました。1日に数百件以上の電話をかけるような会社だったので数をかけると必然的に数件のアポが入るような、本当に迷惑な会社だったと思いますが。

他のどんな仕事をしていてもダメ人間扱いをされてきたと彼は言っていました。そのため、クビになったり雇ってもらえないといった状態で、どれだけゴミ扱いをされてもこの会社を辞めるわけにはいかないと。本音、さっさと辞めてほしいと私は思っていました。ひどい話ですが、愚直に人を怒らせに行くような感じを受けて、手を焼くというレベルではなかったように今になっても思います。

臆病なくせに、なんでこんなにメンタルが強いのだろうか?私も酷い扱いをして彼に接していましたが、アポ件数が平均値を超えたころに、彼が他の人の数倍の電話を続けていることは近くにいたので誰よりも知っていました。

数か月連続で営業目標を達成できず、その責任は私にありました。上司が全責任を持つしかないので。ただ、彼は電話はできても営業になると本当に舐められてしまい、数字になかなかつながらない案件が続いていました。

私は彼のアポの受注率を計算して、彼の数字を達成するためにこれだけの件数が必要だと彼に伝えました。正直あまり現実的ではない件数。私が全部まわれれば良かったのですが、恐ろしい会社で販売単価に対する売上目標も一人で二人分の数字をやることはかなり無理があるような会社でした(だからかなり働かせるけどなかなか目標予算を超えない設定で歩合払わないようにしてコントロールしていたのでしょうが(笑))。

その日から彼は早朝から深夜まで、ほぼ休み問わずに電話をかけ続けてアポを入れ続けました。今だから言えますが、労働基準法を違反するといったレベルではなかったです。

ただ、結果、目標にしたアポ件数が入りました。

だいぶ無理やりなアポの入れ方もあったので結果、その件数でも目標数字になかなか至らないような状況でしたが、ほぼ月末のラストに近い案件3件を私が受注して彼は初めて達成しました。

結果、私が絶賛されました。あんなダメなやつを達成させた!と上からは言われましたが、周りにいた営業たちは、彼が死ぬ気でやっていたのを見ていたので、誰ももう彼のことをダメ人間とは言わず、彼も泣いて喜んでいました。私も自分の力ではなく100%彼の力で目標数字を達成したとその時に思いました。

その彼は翌月月初からも、まったく稼働量が落ちないで仕事を延々と続けました。相変わらずなかなか営業については力が伸び悩み落とす月もありましたが、結果彼は1年後に全社で売上1位をたたき出しました。稼働力が売りのゴリゴリ営業ばかりをする営業150名以上いる会社で、ボンクラのままトップセールスになった彼は私がその会社を辞めた後に本社に呼ばれて部長に昇進を決め、喜んで電話をかけてきてくれました。

とりあえず、

昇進はおめでとう。だけど、あんま長くその会社にはいないようが良いよ、正直その売り方で稼働力は迷惑だから、もっと人のためになることにその力を使いなよ(笑)

とは私は失礼なことを言いましたが、彼は喜んで笑っていました。

彼はその会社のある人が独立したときに引き抜かれて今はそちらの会社にいるようですが、おそらく同じことを延々と繰り返しているでしょう(まったくもって迷惑な(笑))。

不器用なやり方でアポと訪問を繰り返し、誰よりも稼働する姿勢を繰り返した彼は、私に最初に【非凡なる徹底】の力を教えてくれた人でした。

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