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映画感想文「シビル・ウォー」もしアメリカで内戦が起きたら、を描くリアルな作品

いい感じの老け具合に、胸打たれた。

戦場カメラマンのリー・スミスを演じた、キルステン・ダンスト。これぞ、女優である。ティーンの頃、ドラキュラ映画でトム・クルーズと共演した「インタヴュー・ウィズ・ヴァンパイア(1994年公開)」から観ている身としては、胸アツだ。

シワもシミも隠さない、むしろ装ったのかというくらいの自然な老け具合。そりゃ、そうだ。何年もの間、凄惨な戦場を渡り歩いたカメラマン役である。熱い情熱のその裏では、疲れ果て老けこんでるくらいがリアルである。

彼女に対するは、カメラマンの卵、23歳のジェシー(ケイリー・スピーニー)。若さゆえの無謀さと無邪気さで先輩方の足を引っ張ることたびたび。それでも勢いのあるいい写真を撮る。若さと未熟さで弾けそうなジェシーを「プリシラ(2023年公開)」でプレスリーの妻を演じたケイリー・スピーニーが好演。印象に残る。

そんな彼女たちの舞台は分断されたアメリカ。内戦が勃発し、連邦政府から19の州が離脱。離脱した州と政府の戦いが起こる。各地で武力衝突が繰り広げられ、アメリカ全土が無法地帯と化す。

政府は劣勢。おそらくいつか倒されてしまうであろう大統領。ジャーナリスト魂が沸き立つリーと同僚たちは、倒れる前に大統領へ独占取材するため、ニューヨークからホワイトハウスへと車で向かう。そこらじゅうにたがが外れた与太者たちが銃を構えている。

常に緊張感漂うロードムービー。いやあ、実際に戦場カメラマンってこんなんなんだろう。消耗甚だしい。人が争い亡くなっていく現場。そこにいるだけで負のオーラを胸いっぱいに吸い込む。

世代交代感溢れる新旧戦場カメラマンの悲哀にしんみりしながらも、その激しい消耗ぶりを目の当たりにして、納得せざるを得ない。

リアルな画とバックに流れる音楽がマッチし、映画的になかなか見応えある作品であった。

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