映画感想文「室井慎次 生き続ける者」ツッコミどころ満載なれど胸打つ後編。心に訴えかける
ツッコミどころは満載だ。
展開の安易さとか、伏線回収しきれてないとか、いまのコンプライアンスだとそれはダメなのではないかとか。言えばきりがない。
でも、そんなことはどうでも良い。全て吹き飛ばしちまえ!というくらい、室井さんという人の人生が伝わる映画だった。そこに、胸打たれた。
不器用で口下手。感情表現は上手くない。
そんな彼がどんな思いで警察人生を過ごしてきたか。辞める時には何を自分に問いかけていたのか。そして、これからの人生をどのように仕舞おうと思ったのか。
それが、痛いほどにわかるのが、この後編である。
そして時折語られる、当時の湾岸警察署の署員のその後の人生。あー、彼女はそんな風に苦しんでいたのか。なるほど、彼はそうやって今ここに在るんだなとか。同時代を過ごしたひとりとして懐かしく、とても感慨深かった。
そう、人生はかくも思い通りにいかぬものなのだ。それでも、人は生きるのだ。
前編でも感じたが、この作品は同世代への、いわば応援歌である。
映画としての完成度は高くない。それでも、これでいいのだ。これが正解なのだ。
そう思う、励まされる作品である。