映画感想文「フォレスト・ガンプ 一期一会」トム・ハンクスの名演で戦後アメリカ史を辿る名作リバイバル上映
名作は色褪せない。
今観ても胸に響く作品だ。
米国が豊かに栄えた1950年代。60年代の公民権運動、ヒッピーなどのカウンターカルチャー、人類初めての月面着陸、ケネディ暗殺、長きに渡るベトナム戦争。70年代のウォーターゲート事件。
これらの戦後アメリカ史をフォレスト・ガンプ(トム・ハンクス)の人生に絡めて語る。142分と長尺だが、テンポよく物語は進み、全く飽きさせない。
フォレスト・ガンプは希望だ。母ひとり子ひとりの貧しい母子家庭に、特別学級を勧められる知的障害を持って生まれた。それでも彼を肯定し育てる母(サリー・フィールド)の愛を受け、まっすぐ素直に前だけを見て人生を切り開いていく。
才能や育ちにマイナスがあったとて、自らの努力で挽回できる。全てはあなたの受け止め方次第、頑張り次第だよ。
そんな希望の象徴である。
だから彼の成すことは全て成功する。周囲の人もみな彼を助ける。それは誰もが信じたい、そうあったらいいなの世界だ。
しかし現実はそんなに甘くない。
だから幼馴染のジェニー(ロビン・ライト)の存在がある。貧しい家庭に生まれ、親に虐げられ育つ。希望を胸に大人になったが、全てはうまくゆかない。幼い頃の夢に破れ、出会う男たちはいずれもろくでもない。美しいがゆえに消費され、賢いがゆえに次々と色々な思想に手を染めるが、それは彼女を幸せにしない。
いわば、光と影。この構成が素晴らしい。
30年前に観た時は、勝手だと思ったジェニーの行動。今みるといずれも痛いほどに気持ちが理解できる。彼女は私たちである。
そしてそんな彼女の人生や選択をも肯定するラストが本当に素晴らしい。
ロバート・ゼメキス監督はやはり偉大である。更に主演のトム・ハンクス、ロビン・ライトが好演。エリック・ロスの脚本も良い。
公開当時、主演男優賞、監督賞、脚本賞はじめ、アカデミー賞6部門受賞も納得の作品。
先週7/5金から全国100館でリバイバル 上映。当時生まれてなかったような年代の若者やカップルも沢山いた。それぞれの感想は異なるだろう。それでもこうやって多くの人と場を共有できる映画館が好きだ。