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映画感想文「クーリエ:最高機密の運び屋」本気で世界を変えたいと思う人々が世界を救った

満州で生まれた父は、終戦後1年かけて日本に帰国した。

生前、何も語らなかった。

それでも、中国残留孤児のニュースが流れるテレビの前で、自分だったかもしれないと嗚咽する背中を覚えてる。

私は戦争を知る親を持つ、最後の世代だ。生活を共にした人の感情は、体感として深く記憶に刻まれる。

この映画は1962年、米ソ一触即発の「キューバ危機」をめぐる物語。

60年前、人類の終わりを意味した核戦争は、どのようにして回避されたのか。

事実は小説より奇なり。教科書には載っていない衝撃の事実が次々と明かされる。

その分岐点となった最高機密の情報、それはソ連軍参謀本部情報総局の高官ペンコフスキーと英国人セールスマンのウィン、2人の深い友情により成し得たものだった。

派手なアクションもなく高揚する戦争を描くこともしてない。

市井に生きる人々の人間くさい日常を切り取り、心の機微を丁寧に掬いとった、ヒューマンドラマ。

生まれもったヒーローではない、ごく普通の人々の物語。家族や友人と過ごす彼らの姿は、なんら我々と変わらない。それでも彼らは自分が世界を変えなければと本気で信じ行動した。

そして人と人の信頼関係が世界を救った。

偉大なる凡庸なセールスマンを飄々と演じる、主演のベネディクト・カンバーバッチがとても魅力的だ。

本気で世界を変えたいと思う人々が、世界を変えた。

タイトルが今一つインパクトに欠け、良さが伝わり辛く残念。

でも、とても素晴らしい映画、深刻と緩みの折衷バランスよし。ひとりでも多くの人にみてほしい。

私ができることはこうして感想を伝える事くらいなんだけれど。

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