映画感想文「アザー・ミュージック」音楽好きの聖地のレコード店が閉店するまでの物語
映画館で観る映画が好きだ。
わざわざそこに足を運ぶ。上映時間に予定を合わせる。それでも行く。
スクリーンの前の見知らぬ人達の小さなため息、笑い、鼻をかむ音。そんな密やかな存在感が不思議な連帯を育む。
その居心地の良さが落ち着く。だから本作のレコード店に集う人々の気持ちがわかる気がするのだ。
この映画は2016年に閉店したニューヨークのレコード店「アバー・ミュージック」の閉店前の回顧録ドキュメンタリーである。
音楽好きなクリスとジョシュのふたりの青年が1995年にイーストビレッジに開いたその店は、音楽好きの聖地だった。買い物だけが目的ではない。そこに足を運び店員と語り合う。おすすめ音楽を教えてもらう。そんなちょっとしたやりとりは喜びをもたらす。
いわば、サードプレイスである。CDとレコードの品揃えが素晴らしく、多くの音楽好き、ミュージシャンや俳優も集まる。こういう場所って必要だ。気軽に立ち寄れるゆるい居場所。
全く知らない店なのに、閉店のシーンではとてもしんみりした。
居場所はなくしちゃいけない。