![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/111682651/rectangle_large_type_2_1192ae6ec2e613b7134a1dd5272a1d5e.png?width=1200)
映画感想文「余命10年」脇役も盤石な好感度高い作品
「卒業したらさ、なんだか前と同じ様には高校野球が楽しめないんだよねー」
野球部のマネージャーだった先輩が卒業後に訪ねてきた校庭で寂しそうに呟いた。
「みんな年下だし。なんだかもう、世界が違うんだよ」
へー、そうなのね。と受け止めたものの、今一つ消化できなかった。それが今になって理解できる気がしてる。
いつの頃からか、映画を観るときに主役より脇役が気になるようになった。
作品の中での彼らの立ち位置や貢献度を無意識に観察している自分がいる。
そのような脇役マニアからすると、なんといっても毎回瞠目するのが、リリー・フランキーだ。
台詞がほとんどなくとも佇まいだけであらゆる感情を表現し、何を演じても「こんな人、いそう」というリアリティがある。
なんだろう。シワや澱も、今まで生きてきた年輪の全てが演技にきちんと反映されてる。歳月を重ねたことがハンディキャップではなくプラスになってる感じ。
どんな人生を送ればあんな大人になれるのだろう。同年代ながら毎回畏敬の念を抱く。
この映画でもいつものように、彼でなければこなせない演技で物語を締める。
主役のまつりを演じる小松菜奈は素晴らしい映画女優である。この作品でも様々な表情の彼女を堪能できる。作品はほとんど観ているくらい好き。
それでも、この映画の特筆すべき素晴らしさは、達者なベテラン俳優たちが物語のリアリティを支えていることである。
リリー・フランキー以外にも、まつりの両親を演じる松重豊、原日出子のちょっとした仕草や佇まいに溢れ出る情感の豊かなこと。出番は少ないけど胸を突かれる。
そして、ビデオカメラという小道具がアクセントとして非常にうまく機能してること。
まつりが徒然に自らの記憶として撮影した四季折々の風景や記憶が至るところに挿入され、台詞がなくとも10年の歳月や彼らの変化を雄弁に物語る。これはうまい。
社会派映画「新聞記者」で名をあげた藤井監督、こんな恋愛映画もいけるのね、と才能に感嘆す。
おすすめです。