映画感想文「弟は僕のヒーロー」題材も演者も良い。てんこ盛りがちょっと残念な意欲作
待望の弟はダウン症を持って生まれた。
「残念だった」といたわる周囲の言葉に違和感を覚えた両親は、特別な子だと他の3人の兄弟に伝え、4番目の子供ジョーを慈しんで育てる。
そのおかげか5歳の兄ジャックは、弟をすごい力をもったヒーローだと信じて育つ。
だが、高校生になり世間を理解し始める年頃になると、外で無邪気に振る舞う弟の存在を恥ずかしく思い始める。そんな思春期のジャックの葛藤が描かれる。
実話を元にした作品。
イタリアの高校生がダウン症の弟の日常をYouTubeにアップし大人気に。その後、YouTubeに注目した出版社の依頼で弟との物語を本に描いたところ、大ヒット。というストーリーの映画化。
弟ジョーは実際にダウン症のあるロレンツォ・シストが演じている。無邪気で真っ直ぐなジョーをイキイキと体現。まずそこが凄いなと圧倒される。
更にイタリアらしい家族の一体感が素敵だ。この両親は人間としても親としても信頼でき魅力的な人たちとして描かれてる。そこも凄く良い。
つまり、題材も良い。演者も素晴らしい。
のだが、ちょっとてんこ盛り過ぎが残念。家族の葛藤に加え、思春期のあれこれ、恋愛まで入ってていずれも中途半端。
だが、沢山の要素が入ることで、障がいだけを取り上げるのではなく、深刻にならずユーモア溢れる語り口になってもいるのも確かだ。
バランスが難しい。
いずれにしても良作であることは確かである。少しおとぎ話感もあるが、観た後に前向きにほっこりできる作品。
そして蛇足ではあるが‥YouTubeからヒーローが生まれる時代だと改めて再確認した(話は逸れるが藤井風がYouTuber時代からファンである。あっという間に売れっ子になってびっくりした数年前。YouTubeのメディアとしての力が本当に凄いと噛み締める今日この頃である)