映画感想文「ココでのはなし」下町のゲストハウスに集う人々の縁側の関係にあったまる
ぬるま湯に包まれたような、ぬくい映画だった。
東京下町のゲストハウスに集う人々のそれぞれの物語。ゲストを迎えるのはこの3人。
旅好きで明るいオーナー博文(結城貴史)、息苦しい田舎から逃げてきた詩子(山本奈衣瑠)。SNSで日々の生活を発信することが生きがいの泉(吉行和子)。
そこにやってくる旅人も、多彩だ。
声優になりたくて来日。いまは夢を諦め日本で働いてるアニメオタク中国人のシャオルー(生越千晴)。やりたいことが見つからず自ら場末と呼ぶ場所でアルバイトしてるフリーターのタモツ(三河悠冴)。バイクで全国を旅しながら働くライターの道夫(宮原尚之)。
生きてればそれぞれ、誰しも事情を抱えてる。誰かにすぐに助けを求めるほど切羽詰まってはない。そして、誰かに語っても決して解決しない。
それでも澱のように溜まっていく、うつうつした気持ち。自分の抱えてるもの。それを、誰かにちょこっと吐露することで、気持ちが楽になる。
そんな様が、本当にねー、そうだよねー。ととっても共感できる。こんな縁側の関係があったら人は救われると思う。
それでも、赤の他人がそうなるには、少しだけ踏み出すことが必要だ。
「ちょっと飲みませんか」「いま、いいですか」
本作でも、そんな風に誰かがひとこと声をかけて始まっている。それがとても印象的だった。やっぱり、閉じていては始まらないのだ。恐いけど少しだけ開くことで何かが始まるのだ、としみじみ感じる。
そして、シネコンで上映されてなくても、こんな良作は沢山ある。同じく、そういう作品に出てなくても素晴らしい俳優さんは沢山いる。
主演の山本奈衣瑠は先日みた「Super Happy Forever」でも鮮烈な印象残した女優さん。自然体な演技。ほぼ素顔に近い等身大の外見作り込み。一件地味ないでたちなのに、記憶に残る。しかも爽やかで温かな好印象を残す。昔でいうところの山口智子とか今井美樹の感じ。好感度女優として今後引っ張りだこになりそうな存在感だ。
またゲストハウスのオーナー博文を演じた結城貴史は、これまた先日観てとても良かった「DitO」の監督及び主演のボクサー役を演じていた俳優だ。
他にもタモツ役の三河悠冴はテレビドラマ「無能の鷹」で、就活生を演じ若者の鬱屈をうまく体現してた青年だ。
こんな風に、「あ、あの人だ!」が発見できるのも映画鑑賞の楽しみである。
上映館少ないが、心があったまる良作でオススメだ。