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映画感想文「大いなる不在」藤竜也82歳の圧巻の演技。疎遠だった父の人生を辿る息子の物語
タイトルの意味がじわじわ沁みる作品。
長年疎遠にしていた父。職業は大学教授。引退してからも好奇心旺盛、矍鑠として知的なインテリだった。しかし施設に収容され、連絡を受けて駆けつければ、そこにいたのは別人のような姿だった。
父といるといつも居心地悪かった。気難しく偉そうに講釈ばかりたれる。おまけに、自分と母を捨てて別の女のもとに走った男である。
一人っ子としての義務で面倒をみるタカシ(森山未來)。しかしやむなく面倒を見る中で、次第に父の人生に向き合うことになる。
父の二番目の妻直美(原日出子)との大恋愛のいきさつ。そして息子に対する本当の思い。それらが認知症となり日々妄想を繰り返す父の言葉の合間に漏れ出てくる。
時には受け止め難いこともあった。どうやってそれらを消化していくのか。
しかし思うのは理不尽さ、である。目の前にいるのにまともに会話が通じない相手に対し、できることはただそれを受け止めることのみ。拒絶もできるのかもしれない。いや、血の繋がりがある限り、どこまでも世間が追ってくるだろう。
ゆえに自分なりの決着をつけて受け止めるしかないのだ。
そのあたりを森山未來が受けの芝居で好演。戸惑いや怒りを滲ませた佇まいが素晴らしい。
そしてなんといっても、父親役の藤竜也82歳、圧巻の演技。本作で海外の映画祭でも賞をもらっているが、それも納得だ。