映画感想文「PLAY! 勝つとか負けるとかは、どーでもよくて」今どき高校生の青春王道ストーリー
ほんのり清々しく、少しビターな作品。
eスポーツの全国大会に挑む、徳島の高等専門学校の男子高校生3人を描く群像劇。
怪我でバスケを諦めた達郎(鈴鹿央士)。
毎日ゲームに明け暮れる、天才ゲーマーである。
仕事が忙しい両親は自分のことで精一杯。彼の挙動を気にかける暇もない。成績優秀な彼は学校でも先生に手間をかけさせない生徒だ。家でも学校でもまるで透明人間な存在である。
そんなある日、全国高校生eスポーツ大会が開かれることを知り、胸踊る達郎。
しかし応募資格は3人での団体申し込み。友達が少ない彼は、人集めに奔走する。そして組むことになったのは、一学年下の翔太(奥平大兼)。
友人も多く女の子にもモテる金髪。チャラく見える翔太だが、彼もまた、問題を抱えている。不仲な両親。家族に暴力を振るう父親。障害を持つ弟。
残る1人は、唯一家庭には問題なさそうな亘(小倉史也)。しかし彼は学校では成績振るわず、劣等生。友人もいない。Vtuberにうつつを抜かす現実逃避。
そんな3人がお互いを知り、違いを超えて一致団結していく様を丁寧に描く。
テーマは良い。3人の演者の演技も良い。ただ唯一、気になるのは盛り込みすぎなこと。そこが。惜しい。
伝えたきことが拡散してしまっているのだ。
play〜というタイトルにもあるように「子供はもっとのびのび遊べよ」ということが言いたいのか。でもそれにしては弾けた感が薄い。掘り下げ方も物足りない。
それとも、彼らの親のような、高校生からみたらどうしようもない大人を描きたかったのか。でもそれにしては両親の背景について語りが不足している。だからどう捉えていいか判断がつかない。
演者が3人とも良いだけに惜しい。特に奥平大兼。やっぱり、群を抜いてうまい。
そして翔太の同級生役の花瀬琴音。別の作品でも非常に目を引いたが、本作でも強く印象に残る。
きっといつかブレイクすると予感させる女優である。