映画感想文「一月の声に歓びを刻め」凝った設定の三部作。カルーセル麻紀と前田敦子が素晴らしい
長年抱えていた、監督の過去の性被害を元にした作品だという。
安易に批評することはできない。それくらい情念がこもってる。
こういう、本人と一体化した作品に投げかける言葉は難しい。作品として突き放して語ることが憚られるのだ。
三部作である。洞爺湖、八丈島、大阪堂島。全ての場所に、傷を抱える「れいこ」がいる。なかなか凝った設定が興味深い。
そして、一部のカルーセル麻紀の演技が圧巻でビックリした。この人女優さんだったんだ、という程度の認識しかなかったが、控えめに言って、とても良かった。全身から叫びが聞こえる表現力に慄いた。もっとこれからも色んな作品に出てほしい。
そして三部の前田敦子。こちらもとても良かった。八方塞がりの女の閉塞感と、その後の抜け感がうまく表現されてる。あっちゃん、頑張ってるなー。作品見るごとに良くなってる感じに努力と覚悟が見え、好感持てる。
問題は二部である。演技や内容はよい。俳優陣には罪はない。だが、何しろ浮いているのだ。おそらく、深刻なテイストの前後の章と比べ、緩急つけたかったんだろうな。とは理解するが、どうしたって収まりが悪い。
その居心地の悪さにより、伝えたいメッセージが薄まってしまい、残念。これじゃ、一部と三部の良さが際立たない。
しかしそれらを割り引いても、果敢なチャレンジをたたえたい作品ではあった。