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映画感想文「グリーンブック」世界は邪悪に満ちてるからこそ、希望を紡ぐ映画は尊い

1960年代初頭のアメリカ、トイレもレストランも肌の色で分けられ別々だった時代。黒人が利用できる施設の案内書「グリーンブック」を頼りに、人種差別激しい南部を旅する、でこぼこコンビの物語。

武骨で粗野な労働者階級のイタリア男、美人の奥さんが自慢の家族思いで情に厚いトニー(20キロ増量し別人になりきった、本来は知性派イケメンのヴィゴ・モーテンセン)。

神の与えた類いまれな才能を持つ天才ピアニスト、ピアノを奏でる以外では決して感情をあらわにしない孤高の人、ドン・シャーリー(この演技で2度目のアカデミー賞受賞、マハーシャラ・アリ)。

全てにおいて正反対な二人が、2ヶ月の旅の道中、時には喧嘩したりお互いのピンチを助け合ったりしながら、理解しあい友情を育んで行く姿に自然と胸が熱くなる。そして心の襞を共に覗く観客も、気付いたら二人を大好きになっている。そんなチャーミングな作品。

甘めの作風に「こんな話は綺麗事」とシニカルな評論家は言うかもしれない。だけど全て本当にあったこと。なにしろこの脚本を書いたのは、父の物語を語り継ぎたいと願ったトニーの息子なのだから。

世界は時に邪悪に満ちていて、だからこそこんな風に希望を紡ぐ映画は尊いと思う。

デートムービーにも、友人同士でも、子供と一緒に家族でも、あらゆるシーンにおすすめ。

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