見出し画像

映画感想文「夜のまにまに」大阪の街を彷徨う若者を描いた群像劇。朝が来ないで欲しい夜はある

前に進めず、漂ってる。

そんな人達が出てくる映画。不器用に誠実に毎日をやり過ごしてる。そんなみんなが愛おしい。

舞台は大阪。カフェで働くフリーターの新平(加部亜門)。幼馴染の恋人サキ(永瀬未留)と別れた夜に映画館でカスミ(山本奈衣留)と、出会う。

ある日、彼女から彼氏の浮気調査を手伝って欲しいと頼まれる。強引な彼女に押し切られ、無理やり張り込みを手伝わされる。

付き合ってるわけでもない男女の彼ら。しかしそんな風に幾晩も共に夜を過ごす。

それぞれの中にある割り切れない過去。ふたりでいることでそれらが癒され浄化されていく。

夜の街が何度も出てくる。そこを他愛もない話をしながら、だらだらとふたりで歩く。そんな緩やかな夜がとても素敵で、あー、こんな夜、あったよなーと思い起こす。

大人になると毎日は用事で潰れてく。だらだら過ごす事を、いつの間にか忘れていた。そんな自分にご褒美のような作品だった。

なにしろ、主人公の2人がたまらなく魅力的。

優しくて優柔不断。頼まれると断れない。少しだけこころに傷を抱えてる。そんな青年を加部亜門が好演。緩さとナイーブさが体現できてて。あー、こんな若者、いそうだな、とリアルであった。

また最近ブレイク中の山本奈衣留。まっすぐだけど自己中。でも常に一生懸命で、時々妙に誠実。というともすればウザいキャラを好演。彼女が演じると途端に人物像に息が吹き込まれ、魅力的になる。素晴らしい女優である。

2人が夜の街を漂う姿をみて思う。なんて贅沢な時間なんだろうと。ラストがめちゃくちゃ良くて痺れた。磯部鉄平監督の好みだというエンドロールで流れる主題歌がとても良かった。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集