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映画感想文「BELIEVE 日本バスケを諦めなかった男たち」創作を上回る感動のドキュメンタリー
自覚化出来ているかどうか。
強みはもちろん、その裏返しの弱みも。一流とそれ以外の差は、これだと思う。48年ぶりに自力でオリンピックの切符を手にしたAKATSUKI JAPANのドキュメンタリーをみて、改めてそう感じた。
これは、2023年8月25日から開催された「FIBA バスケットボールワールドカップ2023」の男子日本代表の戦いを描いたドキュメンタリー映画である。
この作品はトム・ホーバス監督の掲げるbelieve(自分を仲間を、勝利を信じる気持ち)を軸に勝利までの道程を描いている。それはそれでそうなんだとは思う。リーダーの掲げるそのビジョンが彼らを鼓舞したことであろう。それでも印象に残ったのは、彼らの自覚化の高さであった。
誰でも、自分はこれが期待されてる。それに対してここが足りてなかった。なんとなくは、理解している。それでも、澱みない言葉ですらすらと答えられる人は少ない。
しかし彼らは違う。どの選手もそれぞれの役割を自分の役割はこれである、でもここが足りてない、と明快に答える。そこが明白であった。
当たり前というなかれ。一般社会ではここまで徹底した自己認識の高さは一部の人だけにしかあり得ない。もちろん、リーダーの優秀さにも起因するのだろう。
幼い頃からの何百回、何千回の試合の中で勝ち負けを繰り返し、多くの涙や喜びの雄叫びと共に蓄積されたであろうその自己認識。
技術はもちろんのこと、そのクレーバーさが素晴らしいと感じた。これが一流の証なのだと思う。
尚、製作に電通が名を連ね、バランスの良い構成で見やすい作品に仕上がってる。バスケットボールを知らない私もじゅうぶん楽しめた。
創作を上回るノンフィクションの人間ドラマに心躍る。おすすめの感動作。