映画感想文「傲慢と善良」婚活はかくも過酷なのか。マッチングアプリで知り合った男女の物語
なんだかなー、という感想。
作品が悪いわけではない。俳優の演技力とも脚本とも関係ない。
単純な話だ。主人公に共感出来ないと、こうなる。私には、彼女に共感できるポイントがひとつもなかった。
親から小さなビール会社を引き継いだカケル(藤ヶ谷大輔)。イケメンで仕事も恋愛も順調な勝ち組だったのに。いつまでもモラトリアムしてたら、長年付き合った彼女に「結婚する気がないなら別れる」と振られ、焦り始める。
やむなく婚活アプリを始めるが何十人もに会って同じ挨拶を繰り返す疲れる日々を過ごす。
そんなある日出会ったマミ(奈緒)。素朴で控えめな彼女に惹かれ、付き合うことに。
しかし、付き合い始めて一年が過ぎたある日、突然彼女が消えた。
ここからストーリーは始まる。あとはカケルが彼女を探し「いわば謎解き」をしていく過程を視聴者も一緒に見守る。そんな物語だ。
親の庇護の元で育ち、今度は男に庇護を求める。その依存的なところ、加えてその自覚がない自己認識の低さ。それが受け付けなかった(個人の価値観の問題なので私がそう感じるだけで、共感できる人も多いんだと思う)。
更に自分を卑下し、でもその実プライド高い。そこもなんだか、清々しさに欠ける。
やっぱり共感ポイントがない(演じた奈緒さんのせいではないことを付け加えておく)。
ちなみに小説は昨年興味深く読んだ。一年以上前なので記憶曖昧だが、小説の方には共感ポイントがあった気がする。
尚、このまでと関係ない話で印象に残ったことが2つ。
ひとつめ、一瞬だけ登場する前田美波里の迫力。名士の奥様でお見合いおばさんを演じてるのだが、セリフひとつとっても画面の向こうから圧倒するものがあった。
年輪を感じる圧倒。あー、年月だけではなく鍛えたり磨いたりして生きてこられたんだろう。そんな思いを抱かせる。この人凄い、という記憶に残るインパクトがあった。
ふたつめ、藤ヶ谷大輔の役へのハマり具合。本当にぴったりだったこと。スマートでイケメンなんだが周りにもいそうな身近な感じ。良くも悪くもちょっと鈍感な「The・男」なところ。全て説得力あり、はまり役だ。
そして彼、立ち姿がとても美しい。大画面で様になる。映画向きだ。
尚、映画を見た方には是非とも原作をお勧めしたい。ベストセラーになったのも納得の力作である。