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映画感想文「私の想う国」チリの社会運動に身を投じた女性達を取り上げるドキュメンタリー

訪ねたことはない。

どんな国だっけ?と頭を捻っても、浮かんだのは2つのワードだけ。ワインとイースター島。それしか、思い浮かばなかった。全く知見のない国、南米のチリ。

そのチリで近年起きた社会運動を取り上げたドキュメンタリー映画。

あえての方針だと思うが、主に女性が中心に取り上げられている。なので不謹慎な表現になるが、映像は華やかである。

元はと言えば、2019年に地下鉄料金が大幅に値上げされたことをきっかけに社会運動が勃発したという。あっという間に若者や女性を中心に150万人もの人がデモに参加。反政府運動が続いた。

なにより、驚くことに誰か牽引する強いリーダーが存在したわけでもない。いや、本当は裏でいるのかもだけど、表向きは市井の市民たちの正に市民運動である。

だが、その行動はかなり過激だ。道路の石を叩き割り、その石をデモを押し留めようとする警官に投げつけるという暴挙。警官も容赦なく催涙ガスを放射したり、デモを撮影するカメラマンの目を狙って打ったりする。まるで戦争である。なんだか憎しみと分かり合えなさがぶつかり合ってて非常にやりきれない気持ちになった。

しかし、これにより2021年には36歳の若き大統領が誕生している。結局このやり方で、変化を起こせたわけである。

平和で弛緩した日本人からすると、暴力ではなく話し合いでなんとかしようよ、なんて思うが、そんな考えはやはり能天気なのであろう。

それでも、映画を観た後にチリの現状をいろいろ調べてみても、モヤモヤするのだ。やはり、なにがあったとて、もっと非暴力なやり方でなんとかしたいと思ってしまう。

ある意味、自らのスタンスを確認できたドキュメンタリーであった。

なお、インタビューに答える女性たちはみな普通の人たちである。特に過去になにか社会運動をしていたというわけでもない。思想があるわけでもない。それが生活も楽ではないなかで、どうしてそこまで社会活動に情熱を傾けられるのか。

婚外子が世界で最も多く75%。宗教、家父長制などの影響で離婚が禁じられていることが影響しているという。確かに女性や若者が生きにくそうな国である。

社会で虐げられている人たち、既得権を得てない人たちから社会運動は発生する。女性や若者からこの運動が起きたのもわかる気がする。

女性のインタビュー中心でとっつきやすく、みやすい。一方で淡々とストーリーや主張なく続くので少しだれる。

主張を混ぜすぎても事実が歪められる。しかし作り手からみた切り口が曖昧でも成立しない。ドキュメンタリーとはつくづく難しいものである。

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