映画感想文「茶飲友達」随所にユーモアも見え隠れ、人間の孤独を描く意欲作
人生で孤独を感じなかったことはない。
ニコラ読者モデル出身。童顔でスタイル抜群の主演女優、岡本玲がインタビューで語る台詞が、この映画の全てを表してる。
60代から90代の高齢者専門の売春クラブの摘発、という10年前に実際に起こった事件を元に描かれた作品。
連れ合いに先立たれひとり孤独を託つ者。介護に明け暮れ送り出した後の喪失感に耐えられない者。高級老人ホームで1度も見舞いに来ない息子を待ち続ける者。
性欲もさることながら、何よりも寂しさが彼らを駆り立てる。
正直、それだけなら食指が動かない、凡庸な二時間ドラマだ。
だが、この作品の素晴らしさは、シニアだけではなく若者の閉塞感や孤独をも同時に描いているところである。
まず、主人公である売春クラブ経営者のマナ。彼女を認めず自らの価値観を押し付ける厳格な母親と幼い頃から折り合いが悪く、家族に飢えている。
その寂寥感を埋めるように、クラブで働くティー・ガールズと呼ばれる高齢女性に母を見いだし、共に働く若者たちを姉のように世話し、そこに疑似家族を形成していく。
奨学金に追われる貧困、親の事業の失敗、不倫、目指すものなく夢を持てない孤独、彼女の周りに集まる若者たちもまた、様々な事情を抱え生きてる。
老いも若きも、家族がいても、親友がいても、子供がいても、人は誰しも孤独だ。
そんな諦めと鎧が、私を守りもするし、不幸にもする。
それでもやはり、それを承知の上で、それが自分の生き方だなとこの作品で再確認させられた。
重いテーマながら、ユーモアもあわせもち軽妙に描かれ、ラストのブラックさは、思わず笑ったくらいに絶妙(ある種「猿の惑星」的なラストと感じたのは私だけ?)。
コールガールに扮する高齢女性を、ワークショップを経て選ばれた60歳以上の個性的な女優達がいきいきと演じる。
かなり、おすすめ。