映画感想文「ロータイド」家族の縁を切るが必要な時もある。避暑地高校生のひと夏の経験
家族と縁を切る選択をして欲しい。それがこの映画の主人公の弟に言いたいことである。
そんなことは許されない。そうやって綺麗事をいうのは、厄介な家族を持たない幸せな人たちだ。
時には家族を捨てないと共倒れする。そして負の連鎖は断ち切ることができない。
米国ニュージャージーの海岸沿いの避暑地に住む高校生アラン。悪党ではないが愚かである。
自らの貧困な境遇からの諦めに加え、若気の至りで半ば人生を投げている。
よって、悪友のレッド、スミッティと昼間はナンパ、夜は別荘地の邸宅に侵入して盗難を繰り返す自堕落な日々を送っていた。
しかも罪悪感もなく、である。
彼には学校の成績もよく品行方正な弟ピーター(ジェイデン・リーバハー)がいる。そんな弟を彼は大して考えもなしに、自分たちの犯罪に引き込んでしまう。
そこで見つけた大金。
賢い弟は浮かれずに、どうやってその大金を自分たちのものにするかを考えた。しかし愚かな兄は、浮かれまくり嗜める弟の進言を聞かず、周囲にバレバレの行動を取りまくる。
当然、彼らは破滅へとまっしぐらに向かっていく。
持てる者と持たざる者が共存する別荘地という厳しい境遇。そんな中で腐る気持ちもわからないではない。
しかし、そこで自尊心を持たず自堕落に考えもなしに暮らすことが、どんなに自分を貶めていくかということ。それを悟らせるのが教育だと思う。
だが、彼らはそんな教育を受けていない。
だから、わからないのだ。
貧困の不幸は、そういった教育を受ける機会を持てないことである。親が生活に精一杯で教育する余裕がないことが多い。また周囲にも良い見本がいないことが多い。それは彼らの行く末に大きな影を落とす。
別荘地の女の子に恋したアランは彼女に相応しい人間になろうと初めて目標を持つ。
しかしアランはそれを叶える振る舞いができない。すぐに盗みやお金で物事を解決する癖から抜け出せず、自分の短期的な欲望を制御できないからだ。
よくある話だ。
だから、ピーターは兄を捨てるべきだなのだ。
高校生にもなった兄の更生は幼い弟には荷が重すぎる。
ロータイドとは干潮のことだ。映画の中のある出来事と、人生には潮の満ち引きのような波があると言うことの両方を言い表しているのだろう。
インディーズ映画会社のA24配給映画。2012年設立のこの会社の出す映画は小粒でもピリリと刺激的でいつも注目している。
ありきたりなストーリーではあるが若手俳優たちの熱演でなかなか見応えある作品に仕上がっている。
似たテイストの映画として「スタンドバイミー」を思いだした。
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