映画感想文「辰巳」ハードボイルドなヤクザ映画。紅一点の森田想の好演光る。余韻残る作品
いやー、良かった。
緊張するシーンの連続。終わるまで、ずっと肩に力入ってたハードボイルド作品。
裏社会で生きる男達のしょうもない内輪揉め。からの、無意味な殺し合い。強面の人相悪い俳優さん達がたくさんでていて、いずれも好演。それゆえか、現実もこんな感じなんだろうなと思わせる妙なリアリティがあった。
主人公の一匹狼のヤクザ辰巳(遠藤雄弥)。様々な局面で何を選択するか、葛藤していく時の苦渋の表情がとても良い。そして随所に辰巳という男の孤独や優しさが滲むのがうまい。
でも何より注目は、彼の元カノの妹、葵を演じた森田想。凄い体当たり演技。初めて認識した女優さんだが、本当に素晴らしかった。
男達と一緒に血まみれになりながら、殴り合ったり拳銃撃ち合ったり。復讐にまっすぐな無防備さが眩しい。
気が強くて向こう見ず。どうしようもない生意気なやつ。誰にでも噛み付く様が憎らしい。のに、段々可愛く見えてくるから不思議だ。
辰巳が放っておけなくなる、その気持ちが理解できる。
人と人の情が通じ合い、「わかった。とことん付き合うよ」となっていく過程が丁寧に描かれてる。
そういう時って、ある。
男女関係なく。恋愛ともまた違って。こんな風に誰かに気持ちを持ってかれてしまうのだ。まるで運命のように。
ということで、なかなか見応えのある作品である。