映画感想文「すべてうまくいきますように」85歳の父の終活をめぐる娘たちの物語
「終わらせてくれ」
脳卒中で身体が不自由になった、85歳の父親が長女に頼む。しかも軽やかに。
実業家として成功を収め、晩年は美術品や音楽の愛好家として人生を謳歌していた父はいう。
「延命と生きることは違う」
父の切なる願いは、その後に綴られる、力強く愛とユーモアに溢れた彼の人生が垣間見えるに連れ、説得力が増す。
そしてそんな豊かな人生でも、夫婦の関係、親子の関係、姉妹の関係に時々、ひやりと胸が冷たくなるわかりあえなさや痛みがあって。どんな恵まれた家庭にも刺はあちこちにあると、やけにリアル。
どうして離婚しなかったの?と問う娘に母(シャーロット・ランプリングがさすがの貫禄)がこたえるシーンが見ごたえあり。これだけで泣けた。
そして、長女を演じるソフィー・マルソーが、皺もシミも見せながらも作られてない円熟した美しさで驚異的。これをみるだけでも価値あり。
フランス映画らしい、明確な答えを提示しない余韻残すラストが秀逸。
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