映画感想文「推しの子」絵空事と思っても心揺さぶる力ある作品。齋藤飛鳥が素晴らしかった
絵空事、と思っても心揺さぶられた。
それが大ヒットする作品の底力というべきか。大ヒットコミックの映画化。原作未読。
山深い病院で働く研修医の吾郎(成田凌)。入院患者の中学生(稲垣来泉)にえらく懐かれている。彼女の推しは、アイドルグループ「B小町」のセンターをつとめるアイ(齋藤飛鳥)。いつの間にか吾郎もアイの推しになっていた。
そんなある日、アイが吾郎の病院に訪れる。驚く吾郎。そして‥。
アイドルとは嘘で塗り固め、見る人に夢を見させ、それを真実にしていく存在。そんなセリフが出てくる。正にそんな夢うつつの存在に思える、透明感溢れる齋藤飛鳥が適役すぎる。体温が感じられない、かといって冷たいというわけでもない。掴みどころないという不思議な個性を持つ彼女にぴったりの配役である。
テレビドラマでも見かける彼女。知る限り、その中でも、この役がめちゃくちゃ適合度高し。彼女の個性が活きている。
また、アイの子供、アクア(櫻井海音)、ルビー(齊藤なぎさ)も共に絵空事に感じるような美しさがあり、良い。
特に齊藤なぎさ。映画でもいわゆる「ぶりっ子」的な役柄が続いているが、その道の専門家になりつつあると思う(私調べ)。
「交換ウソ日記(2023年公開)」「恋を知らない僕たちは(2024年公開)」「あたしの!(2024年公開)」と類似した役柄続いており、いずれも好演。
そして謎の男カミキヒカル役の二宮和也。これまた低体温の空虚さを体現してて適役。更にちょこっとしか出てこないが成田凌。演技うまい。ただのイケメンではなかった。
ということで、私なりに思った本作のヒットのセオリーは以下の通り。もちろん脚本の巧みさはいうまでもない。
■対になる価値観や存在の提示で考えさせられる
良心と悪意。愛と裏切り。光(アイドル)と陰。色々な対になるものが配置され、こちらに投げかける。
■アイドルや推しの定義に納得感あり好感持てる
アイドルとは嘘で塗り固めたものと言い切らせてるところなど、明言してる定義が痛快で、好感が持てる。
■配役がぴったりでいずれも好演している
齋藤飛鳥、齊藤なぎさ、成田凌が私のBest3である。
初見でも充分に理解できる作品。安心して楽しめる。