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映画感想文「パストライブズ 再会」登場人物がいずれも魅力的な温かい愛の物語
あなたにはないだろうか。
愛している。それなのに、超えられない壁に打ちのめされたことが。
その距離はどうしても埋められない。お互いにどうしようもない。何かの拍子で、それが明確にわかってしまうことがある。これはそんな物語だ。
韓国ソウルに住む同級生の少年少女。
だが、少女の家族は新天地を求め米国に移住。12歳で離れ離れになったふたり。
その後36歳で24年ぶりに彼女の住むニューヨークで再開。たった数日のその邂逅の物語。
歳月は2人に変化をもたらす。彼女には夫(最近引っ張りだこのジョン・マガロが好演)がいる。幸せな彼との暮らしがある。そしてすっかり米国の文化に馴染んだ彼女にはオールド韓国な彼の価値観が理解できなかったりする。
そして少年だった彼もまた、彼にとって異国の地ニューヨークで活躍する彼女を遠い目で見つめる。
お互いにいまは違う場所に立っている。
それでもお互いの幸せを願い、いまも相手を思う。そんな愛の形がある。
そんな普遍的な愛の物語である。
夫役のジョン・マガロがめちゃくちゃいい味を出してる。遠くから会いにくる妻の幼馴染。嫉妬しないわけはない。おそらく不安な気持ちはある。それでも妻を信じ愛している。そしてなんなら、どうなったとて、妻の幸せを願い、それを大切にしたいと願う。
だからこそ、怯える。
再会を喜ぶ妻によかったねと祝福しながらも、不安が滲み出る。どちらも本当だ。
そんな複雑な感情の揺れが見事に表現されてる、芸達者ぶり。
また主人公のノラ(グレタ・リー)、ヘソン(ユ・テオ)の2人も人間的に(もちろん外見もだが)とても魅力的だ。
登場人物がいずれも友達になりたいと思う誠実さと温かさを持っている。だからこそ、身につまされる。そんな愛の物語である。