映画感想文「本心」近未来のバーチャルな人間とリアル人間の邂逅。どちらも曖昧な存在である
ありそうで怖い。
サクヤ(池松壮亮)はある日、母(田中裕子)から「大切な話がある」と電話を受ける。帰宅すると雨の中、川沿いを歩く母の姿が。危ない、とサクヤは豪雨の中で母を追いかけるが、見失ってしまう。
そして、大切な話を聞くこともなく母は亡くなってしまう。
母の話しが何だったのか後ろ髪引かれるサクヤは、300万円で母のバーチャルフィギュアを作る。
そして、母の友人だったというミヨシ(三吉彩花)と母のバーチャルフィギュアの3人で一緒に暮らし始める。
貧しいが平穏な暮らし。だがそこに侵入者が現れる。
田中裕子と池松壮亮が流石のうまさ。それに加え、最近女優として頭角を表してきている三吉彩花が好演。また脇役に妻夫木聡、綾野剛、水上恒司、窪田正孝、と豪華出演者。
AIGの台頭、格差社会の貧困問題、犯罪者の再生問題、恋愛、親子愛と様々なテーマを投げかけ拡散してしまった感否めず。
それでも、生きていても亡くなった後のバーチャルフィギュアでも。結果人の本心は誰にもわからないとしみじみ思う。いや、そもそもいまここに生きてる私だって正に、自分の本心がわからなくなる時が多々ある。本人さえも分からぬ本心を誰が分かるというのか。
一方で本心って重要なのか?とも思う。誰がどんな本心を持っていようが相手には見えるものしか(感じるものも含んだ見えるものしか)分からないのだ。
相手に伝わらない本心が大事なのかどうかについては、疑問がある。伝わらなければないも同然だから。バーチャルな人間もリアルな人間も存在の曖昧さにおいて違いがない。そこが恐ろしかった。
さすが、平野啓一郎氏の小説。原作もこれから読もう。