映画感想文「若き見知らぬ者たち」いっぱいいっぱいの若者を救える大人になりたい。自分もアップアップだけれども
つらい、ひたすら切ない。
亡くなった父(豊原功補)の借金を返すために昼も夜も働くアヤト(磯村勇斗)。おまけに残された母(霧島れいか)は病気で介護が必要な毎日だ。
いまにも崩れ落ちそうなアヤト。学生時代からの恋人(岸井ゆきの)はそんな彼を理解して彼の生活を共に支えてる。
誰もがいまにも崩れ落ちそうにいっぱいいっぱいな状況。そこである事件が起きる。
アヤトの家族だけではない。彼らを取り巻く人たちもみな、登場人物たちは目いっぱいに見える。
そう、誰もがそれぞれのキャパシティの中で必死に生きてる。ちょっとバランスを崩したら壊れてしまう。
そんな現代の危うさを徹底的に表現している作品。
しかしね、こういう時こそ手を差し伸べられる大人でいたい。例え自分も目いっぱいだったとしても。
そして自ら「助けて」と声を上げられる大人でありたい。
お互いに助け合う。ってことがもっと家族を超えてできないものかとしみじみ思う。そんな世の中を作れる大人でありたい。
そして磯村勇斗、本当にすごい。こういう難しい役のなりきり度合いが秀逸。彼はどんな色にも染まれる、色のついてない、いい意味で主張のない真っ白な俳優で本当に凄いと思う。いつも、新しい顔を見せてくれてありがとう、と言いたい。これが本当のプロだ。
更に友人役に染谷将太。恋人役に岸井ゆきの。ってこれ、芸達者三つ巴。見応えある作品であった。