映画感想文「SUPER HAPPY FOREVER」思い出は人を押し潰す。妻を亡くした男の慟哭を描く
思い出がいっぱい。
なんだか鼻の奥がきゅーんとなり、鼻水が出た。
海辺のリゾートホテルにやってきた男ふたり。佐野(佐野弘樹)と宮田(宮田佳典)。佐野にとってそこは、亡くなった妻(山本奈衣瑠)と5年前に出会った場所だった。
当然彼女はそこにいない。でも思い出は溢れ出てくる。幸せな思い出のはずなのに、喪失の思いが彼を苛む。悪酔いしたり、暴言吐いたり、荒れまくる佐野。
挙げ句の果てに、同行してくれた宮田に八つ当たり。
おまけに思い出のホテルは、もうすぐ閉館になるという。少しずつ消えていく妻との思い出。
前半はひたすら佐野の喪失を描く。正直しんどいくらいだ。ほとんどの人は佐野のことを嫌いになりそうになるだろう。
打って変わって後半は5年前の夏。佐野と妻の出会いが描かれる。そこでの佐野は別人のように穏やかでひたすらに優しい。
ちょっとした偶然が重なり、同じホテルに泊まっていたふたりは出会う。段々と意気投合していく。よくある、ボーイミーツガール。
そんな風に出会ったのに、ある日妻は突然に帰らぬ人になった。
佐野と妻、佐野と宮田。はたまた佐野とホテルの従業員。など、ちょっとした日常のやり取りの連打。それが上手い。そんなシーン、現実にありそうだよねと思えるリアルさ。
人はなぜこんなにも思い出に弱いのか。しかも幸せな思い出ほどにシクシクする。二度と同じシーンはないという喪失感に押しつぶされそうになる。
こんなに辛いならなければよかった。それでもいつか、その思い出が彼を救うことを願う。
そんな未来を示唆するようなラストが印象的。