映画感想文「テルマ&ルイーズ」当時はモヤモヤした女達のロードムービー。やっぱり名作だ
33年前に映画館で観た。
ストーリーは面白かったが、とってもモヤモヤとしたのを覚えてる。
軽率な行動を繰り返すテルマ(ジーナ・デイヴィス)に苛ついたのだ。
冒頭から、女友達との一泊旅行を夫に切り出せない。バーで初めて会った男とチークダンスを踊り、その上泥酔。犯されそうになる。その後も明らかに怪しい若者(ブラッド・ピット)を部屋に引き入れ、大変な目に遭う。
なんでこんなに愚かなんだろう。
嫌悪感しかなかった。
今思えば、きっと怖かったのだ。そんな女になってしまうかもしれない、自分が。
そうならないように、毎日必死で踏ん張っていた。
女でも頑張らねば。女だけど強くならなきゃ。女っぽさを見せたら、つけ入れられる。そしたら悪いのは自分だ。
当時の私の価値観。肩に力が入りまくっていた。
お疲れ、当時の私。
いま観てもテルマの破天荒な行動の数々には賛同できない。でも、安易に人を信じ、自分の欲望に素直に生きる彼女に、ある種の羨望を覚える。あの頃も嫉妬があったのかもしれない。
そして、前回は「だって男ってこうだよね」と当たり前に受け止めていた周囲の男達の態度の数々に、ざらりとした違和感を覚えた。
すれ違いにセクハラまがいの卑猥な言葉を浴びせるトレーラーの運転手とか、ルイーズ(スーザン・サランドン)の自分勝手な恋人とか、他にもたくさん。
やっぱり失礼だわ、これ。性別関係なく、人として。
ロードムービーとしても素晴らしい本作。改めてみても、グランドキャニオンはじめ、米国南部の壮大な景色が大変美しく、見応えがある。4Kデジタルリマスターのリバイバル上映でも楽しめた。
また、ブラピの出世作としても有名だが、確かにはっと目を引く美青年ぶりが目立ってた。一緒に観た女友達と、あの人誰?と騒いだものだ。
そして、男らしさの権化みたいなハーヴェイ・カイテルが、彼女達に理解を示す刑事役なのが興味深い。
何度見ても唸るのは、爽快さの影に悲しみも併せ持つラストシーン。映画として本当に素晴らしい。何年経っても、色褪せない名作である。