映画感想文「あの人が消えた」必見の面白さ。何度も予想覆され、最後は心揺さぶられる
天才かよ。
いやー、面白かった。
これが完全オリジナル脚本なんて痺れる。すごい腕持ってる、水野格監督。
いくつものドラマを見たかのような多重なストーリー。予想を何度も覆される、どんでん返しの連続。
それでいて、細部に渡るまで手を抜かない。これはもう、ひたすら賞賛しかない。
コロナ禍に職にあぶれた青年丸子(高橋文哉)。誰かの役に立ちたいと、トラックを走らせ荷物を届ける宅配便の配送員になる。しかし配達が遅いと罵られ会社では上司に怒られ、疲れ果て消耗する毎日。
唯一の生きがいは小説家希望の職場の先輩(田中圭)に教えてもらったWEB小説。配達の合間にトラックの中で大好きな作家の作品を携帯で読み、感想を投稿するのが日課だ。
キラキラした高橋文哉が、暗く地味で幸薄い青年を演じている。こういう青年、きっといる。どこにでも転がっていそうな、ちょっとした不幸せ。
そんな彼が担当になったのは事故物件のマンション。人が消えるともっぱらの噂だ。そこに毎日配達に訪れる彼は、ある日怪しい男(染谷将太)を見つける。
怪奇現象か神隠しか。果たしてそのマンションの謎はなんなのか。
ともかく、出演者が豪華。
カメレオン俳優の染谷将太と菊池凛子夫妻。存在感見せる中村倫也。袴田吉彦、北香那。みんなとってもよかった。個人的には緊張感あるストーリーの中で、癒しになるおとぼけ田中圭の存在に終始救われた。
ただ、怖いだけ。ほら、凄いだろとばりに驚かせるだけ。はよくある。でもそれだけじゃない、ちゃんと心が通ってる作品なことが素敵だなと思う。
昨年「ブラッシュアップライフ」て国内外で高い評価を得た35歳の監督の瑞々しい作品。超絶おすすめ。