映画感想文「ドッグマン」さすがリュック・ベッソン。邪悪と愛。人間の矛盾を見事に描き、切なさの極み
思わぬ拾い物。
さすが、リュック・ベッソン。
殺し合い憎しみ合う、人間の邪悪。そして罪深い手にも宿る、深い愛や友情。
絶望と希望が入り混じる。でもそんな矛盾を抱えてるのが、人間だ。
根底は「ニキータ(1990年公開)」「レオン(1994年公開)」などの同監督の初期作品と同じテイスト。バイオレンスと希望。
切なさにため息が漏れ、エンドロールの後、立ち上がれなかった。この監督のこういうところが好きだ。
ある晩、警察に止められた不審なトラック。運転席には女装の負傷者。荷台にはたくさんの犬たち。
警察に勾留された男が語る、驚きの半生。喜びと苦悩に満ちたその人生は胸にずしりと響く。
主演のケレイブ・ランドリー・ジョーンズが素晴らしい。悲しみと慈しみを湛える瞳に何度も吸い込まれそうになる。
眉ひとつの動き、時々捻られる唇。感情表現の豊かさにこちらの心もうねる。この快演に拍手喝采を送りたい。
荒唐無稽な物語。でもそれがかえって功を奏し、ファンタジー感により、やるせなさを中和してる。また彼と対する精神科の女医のリアリストさ。こちらも塩梅よき差し水となっている。これらのバランスが良い。
更に、音楽がめちゃ良い。映像もスタイリッシュ。題材やポスターからはおどろおどろしたものを想像するが、王道ヒューマンストーリーである。
宗教観強めなところだけ日本人には理解できないところもあるが、気になるのはそれくらい。
おすすめしたいダークホースな映画である。