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映画感想文「名もなき者」ボブ・ディランを演じるティモシー・シャラメが天才過ぎてカリスマの説得力が凄い
才能の煌めきに、ひたすらため息。
稀代の天才、ボブ・ディラン映画。演じるティモシー・シャラメも同様に天才過ぎて、説得力が半端ない。演技だけでも凄いのに、その上、歌も演奏も全部ティモシー・シャラメ本人とはびっくり。才能ありすぎだろー。
1961年冬。ミネソタからNYにやってきた20歳の青年、ボブ・ディラン。無名なギター弾きがあっという間に時代の寵児になっていく5年間を描く。
ベトナム戦争、公民権運動、キューバ危機、ケネディ暗殺。時代が変化していく中で、彼の描く音楽は人々の心を捉えていく。支持されたのはこういう時代背景も関係していたことがよく描かれている。
女ったらしで気分屋で嘘つきで。クスリこそ出てこないが、そのほかはいかにもミュージシャン、なボブ・ディラン。それでも夜中だろうと風呂に入ってる時だろうと、何かに突き動かされるように常に曲を作る勤勉さに心乱される。一心不乱な人って、魅力的だ。
恋人のシルヴィアを演じるエル・ファニング。何度もみたことあるが本作は過去最高の演技だと思う。有名になるに連れ距離を感じ溝ができていく様の演技はみている方もきゅーんと胸が締め付けられた。
また、こちらも歌は本人が歌っている、フォーク歌手のジョーン・バズエを演じるモニカ・バルバロ。才能溢れる歌手同士、恋人でもありライバルでもある複雑な関係を見事に表現。
ボブを取り巻くこのふたりがとても良い。
また、ピート・シーガーやウディ・ガスリーなど、先達のフォーク界の先輩たちから導かれ、そして超えていく様が、世代交代あるある、で印象深い。物悲しく、でも時代はこういて受け継がれていくのだと、力強くもあった。
音楽に疎いが流れる曲を結構な割合で知ってて自分でびっくり。それだけ知らぬ間にボブ・ディランの音楽を聴いていたのだろう。世界中で支持されてるってこういうことだ。
全体的にエグくなく、さらっとしてるのが本作の特徴。そもそもボブ・ディラン自身がそんな印象だ。よってあえての演出なのか、それともなんらかの制限があったのかは不明。
60年代米国の時代の空気を感じながらボブ・ディランの音楽が堪能できる、音楽映画である。