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映画感想文「違国日記」あなたと私は違うけどあなたを尊重する、そんなスタンスが心地よい

同性の兄弟は複雑だ。

性別が一緒なこともあり、子供の頃から比較される。お互いに無意識にライバルとなり、時に傷つけ合う。

まさにそんなケースである、小説家の槙生(新垣結衣)と、専業主婦の姉。ほとんど没交渉である。ところがある日、そんな大っ嫌いな姉の訃報が届く。

残されたのは、一人娘の中学生3年生の朝(早瀬憩)。そして両親を亡くし行く当てのない朝に思わず手を差し伸べ、一緒に暮らすことになった槙生。

人嫌いで引きこもりの槙生にとって、それはあり得ない選択であった。しかも相手は多感な年頃の女子中学生。

こうして始まった2人暮らし。最初はお互いに衝突する。それでも互いを尊重し合い、それぞれが成長を遂げていく。

何しろ、配役が完璧。

特筆すべきは朝を演じた早瀬憩。女子中学生の幼さと揺らぎを的確に表現。目を奪われる好演である。いままでも朝ドラなどにもでていたというが全く気づかなかった。彼女の今後の作品もぜひ観たい。

また新垣結衣が「正欲」に次いでこちらも好演。というか、役柄が彼女のキャラクターに合っている。やや無愛想であまり女女してないクールなキャラって、彼女の真骨頂ではないかと思う。髪の毛ボサボサでメガネ。部屋は散らかってて足の踏み場もない。そんな乾いた役も彼女が演じるとリアルだけどチャーミングに見える。

そして絶賛したい3人目。槙生の親友醍醐役の夏帆。ドラマでも映画でも主人公の女友達が定番の彼女。男性でいうと仲野太賀的位置付け。本作でもこんな親友いたらいいな、を見事に演じ、得難い存在であるとしみじみ思う。

この作品の特徴は槙生が変に中学生に迎合しないところである。私は私、あなたはあなた。というベタベタしないで互いを尊重する生き方がめちゃくちゃ、かっこいい。

ほんとに。ついつい面倒になり様々なことに迎合してしまう毎日であるが、こんな風に私は私、あなたはあなた、と生きたい。

そしてラストに近づくにつれ、少しだけ明かされる、槙生とは違う生き方をした、姉の思いにも泣けた。

あなたも、それでいいんだよと肯定されたかのような読後感。が心地良い作品である。

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