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映画感想文「縁路はるばる」香港の不安定な今を恋愛事情から見せる力作
不思議な緊張と緩さが同居する映画である。
ITオタクの28歳のバウは内向的で女性に縁がない。
だが、なぜか急にモテ期到来。次々と5人の女性から迫られるという展開。
この女性達が揃いも揃っていずれも、事情を抱えている。
重い病だったり、禁区と呼ばれる香港と中国の境目、住民以外は入らない地域に住んで制限ある暮らしだったり、次々国を捨てる世相の中で移住に悩んでたり、変化激しい香港で成功者だったはずが事業に失敗した親を抱えてたり。
女性達を通し、何気に不安定な今の香港の政治や経済の状況が表現されてるのが興味深い。
そして5人ともが香港郊外(いや、むしろ僻地)に住んでいるため、観光客が訪れたことのないリアルなエリアの住宅事情が垣間見れるのが楽しい。
主演のカーキ・サムは絶妙な、確かにダサいけどこれはモテるかも、というラインを演じててうまさに唸る。
とりあえず、安定した仕事についており仕事熱心でもある。人としても常識的でまっとう。主張激しい女性達に歯向かうことなく従順だし、いい意味で鈍いのがまた良い。事情抱えた女性達からすると安らぐ。
こういう人はモテる。
そして彼の存在が女性達の重い事情を軽やかにしている。
割と拾い物の映画である。
しかし、香港。大変そうである。
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