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映画感想文「雪子a.k.a.」29歳小学校教師の惑いが普遍的で胸を打つ、それでも人は生きていく

嘘のない誠実な作品だ。

静かな勇気をもらえる。

29歳の小学校教師雪子(山下リオ)。熱血教師でもなく、生徒の人気者でもない。不登校の生徒にも怯えてどう接していいのかわからない。教師としての自信が持てない毎日。

趣味は音楽。ラップをやってる時だけが本当の自分だと思っているが、そのラップでもパッとしない。ラップバトルでは対戦相手に「本音が見えない。愚痴を垂れ流してるだけ」と見抜かれ、こてんぱんに刺される。

付き合ってる彼氏(渡辺大知)とも、将来どうしたいのか答えを出せず、モヤモヤしてる。

何もかもが不確かで不安。誇れるものもない、平凡な自分。

あー、わかる、わかる。と思う。29歳なんて正にそんな風に悩める年齢だ。それに、そもそも何歳になっても、人は明確な自信なんて持てない。40歳でも60歳でも、たぶんそうだ。人生なんてそんなもんである。

その証拠に彼女からみたら迷いなく見える周囲の人々もみな、それぞれの迷いを抱えながら生きてることが段々わかっていく。

それでも生きていく。そうやってみな、毎日を積み重ねてる。

何しろ、雪子を取り巻く人々に芝居の上手い演者を配しており、彼らのセリフがいちいち沁みる。

特に仕事が趣味と語る、先輩教師大迫先生役の占部房子、不登校生徒の一見クールな父親役の池田良。このふたりの演技に、思わず泣いた。これを聞くだけでも観る価値がある。

そしてこれが2作目という草場尚也監督の作品を是非また観たい。

最後に、余談。雪子の彼氏がワンフレーズだけ弾き語りするシーン。その歌のうまさに衝撃を受けた。あとからググって知る。演じていたのはボーカリストでもある渡辺大知であった。やはり才能というのは明確にあると悟る。

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