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映画感想文「ゴッズ・クリーチャーズ」アカデミー賞ノミネートが母と息子を演じる意欲作

東京がやっぱり好きだ。こういう映画を観ると、毎回そう思う。

アイルランドの港町。

男は漁に出て、女は水産物の加工工場で働く。お互いの家族関係まで全員が知ってるムラ社会。ちょっとしたことでもあっという間に噂が広がる。

日本にも、いや他の国にも世界中のあちこちに、多数存在してるであろう、閉鎖的な田舎町。

そして海で漁を共にする男たちの固い連帯感。そこには女は絶対に入れない。

文明が行き届かない体力勝負の世界。そこでは体力で優る男が圧倒的に有利だ。よって、完全な男社会となる。

家を出て行ったきり、7年間音沙汰なかった息子ブライアン(ポール・メスカル)が突然帰ってきた。工場で働く母親アイリーン(エミリー・ワトソン)は喜んで迎え入れる。

しかし、このドラ息子、とんでもなくダメな奴なのである。よって、彼が帰郷したことで、平穏だった村に色々な波紋が巻き起こる。

やれやれ、である。

息子を演じるのは「アフターサン(2022年公開)」でも繊細な父親を演じ、アカデミー賞にノミネートされたポール・メスカル。若いのに溌剌さはなく。どこか不健康さを感じさせる、こういう病んだ役が異常にはまる。

本作も適役。

しかし、息子の病み具合もさることながら、そんな息子にしてしまったであろう母の病み具合が問題である。

義父の介護に明け暮れ、うだつの上がらない夫を抱え、息子だけが救いであったのか。それにしても過保護な対応の数々が行き過ぎ。一見息子のためのようであるが、結局は独りよがり。心底恐ろしい。

母役のエミリー・ワトソン。出世作である「奇跡の海(1966年公開)」と似たような、激重な女を絶妙に演じる。善意に見える自己中を演じられる女優。この人も流石のうまさである。

しかし、もし自分がこの村に生まれたら、さっさと逃げ出す。人それぞれだと思うがこの手の重さが苦手である。それなら寂しい方を選ぶ。

よって、隣の住人と年に数回エレベーターで挨拶するだけ。街に出れば私を知ってる人は誰もいない。そんな都会が私は好きだ。

A24プロデュース作品。マイナーだけどちょっと尖って見応えある作品多く、日本公開が嬉しい。

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