映画感想文「ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命」ナチスから669名を救った偉業の真実
止めておいた自転車がなくなった。
4年間乗っていた愛車のママチャリ。
何度周りを探してもどこにもなくて。とてもブルーな気持ちになった。怒りよりも悲しかった。世の中を信じられなくなった。
そんないま、善意の物語が沁みた。
第二次世界大戦直前のプラハ。ナチスの脅威から逃れてやってきたユダヤ人たちで溢れていた。ドイツ軍はヨーロッパを制覇しようとしていた。やがてプラハにもやってくるだろう。
それを恐れたニコラス・ウィントン(アンソニー・ホプキンス)は、里親を探して子供達を英国に逃すことを思いつく。莫大な資金が必要であり、行政を動かす必要もあった。それでも事を成し遂げようと決意したニコラスは、自らの家族にも協力を仰ぎ、仲間を集め、なんと戦争突入前に669名の子供達を英国に送り込む。
戦後50年経ち老いを迎えたニコラス。妻や娘に囲まれ、英国で幸せに暮らしていた。しかし彼の脳裏にはいつも、助けられなかった子供達があった。彼は生涯、ずっと後悔の念に苛まれていた。
しかし、ある日テレビの取材クルーから連絡がある。そして思いがけない出会いが訪れるのであった。
という、事実に基づいた物語。
あの時代に自らの危険も顧みず善意を発揮した人たちがいたことが、本当に本当に素晴らしいと思う。心温まる素敵な物語だ。
しかしなんていうか、残念なのは脚本が盛り上がりに欠けることである。こんなこといったら不謹慎なんだが、事実通りにしても、もう少し起承転結つけられなかったのか。そんな風に感じた。
そこだけが惜しい。
それでも善意を映画という形で伝えていくことには大きな意味がある。よって、この映画の存在は貴重である。
だから、私はホラーや悲しい結末よりもハッピーエンドが好きだ。