夏の思い出。舞台ハリポタの記録。
夏が終わる。
気候も落ち着いて、秋の装いをしなければ夜は肌寒く、だんだんと劇場に漂う風も変わってきた。
今年もあっという間だった。
舞台ハリー・ポッターと呪いの子、
最愛の藤原ハリーがいよいよラストの登壇になる。
9/30の昼夜公演を前に心が震えているけれど、ここで観劇の思い出をまとめたい。
どこから観ても最高!
去年6月9日プレ公演からのチケット枚数を数えた。
オンラインチケットも併せて、2022年6~9月、2023年6~9月で41回分。
41回。41回…………藤原竜也さん41歳!!(偶然でしかないが、感動した)
昨年のほうが出演回数も多く、8月後半はとくに必死にスケジュールをこじあけて観ていたからこその回数である。(それでも足りないけれど)
今年から値上がりしたチケットと、限られた出演日のなかでとにかく刻んでおきたかった。(それでもまだまだ観たかったけれど)
座席を見ると、昨年は下手側(客席からステージを観て左)の席に集中していたものの、今年は上手側(右)が多かった。これはハリーの大好きなシーンで深化した部分があるからなので、次の章で詳しく書きたい。
下手、上手、前方正面、中央~後方正面、2階席と、さまざまな角度から愛しいハリーを観て、毎回いろんな想いが沸き上がった。役者さんたちの表情がハッキリ観えるからこそ丁寧な芝居に没入でき、においや温度は、前方ならではの楽しみだった。
アンサンブルの方々の動き、すべて人力である舞台装置の転換や空間の使い方を全体で見渡し魔法世界に入り込める中央~後方の席でも、感動は絶えなかった。
さまざまなキャストの組み合わせで。
今年からキャスト交代が相次ぎ、ハリー、ロン、ハーマイオニー以外はその週の火曜日にキャスト発表となったため、組み合わせを選んでチケットを買うこともなく、結果としてさまざまなキャストで観劇ができた。
息子アルバス役のお二人、どちらの組み合わせも同じくらいの回数楽しむことができ、どちらのアルバスも違ったハリー像をもたらしてくださった。
福山康平さんのアルバスはどこか落ち着いていて、子どもらしく叫んだかと思えば、大人びた顔つきでハリーを俯瞰している場面が多かった。二人はどことなく同じ目線で向き合うことが多く、セリフとセリフの行間も静かに感情を交差させているように感じた。
藤田悠さんのアルバスは思春期の不安定さが際立ち、ハリーに対しても背を向けることが多かった。そんなアルバスになんとか近づこうとするハリー。父の不器用さを感じながらもうまく接することのできないアルバス。二人のふり絞るような声が大好きだった。
ロン役にエハラマサヒロさん、迫田孝也さん、石垣佑磨さんと個性豊かなキャストが加わり、竜也さんハリーの遊び心溢れる表情や動きも、より豊かになった。
ハーマイオニーに笹本玲奈さんが加わり、ハリーはもちろん、ロン、ローズとの家族関係にも違う印象が芽生えてさらに楽しむことができた。
かねてより楽しみにしていた間宮啓行さんのダンブルドアと竜也さんハリーの様子も、より深く、濃密で繊細な心境が胸に広がった。死して肖像画となり絵具と記憶としてハリーへの想いを語るダンブルドアとの対話は、今年7月後半から客席に顔を向け、ダンブルドアに背を向けるようになった。こみ上げるハリーの悲しみと、ぶつけようのない痛みとこらえきれない涙。より一層大好きなシーンになった。
どのキャストも本当に魅力的で、感想を書ききれない。。。
客席の賑わい。学生団体との観劇。
今年から学生団体の観劇日が増え、役者さんたちもその活気ある客席に感動されているのをSNSで拝見していた。
なかなか被ることがなかったけれど、先日、今年初の2階席で観劇したときに後方に座ったのは学生服を着た子たちだった。夜の公演だったので学校行事のだろうしおりを持って、どこか疲れた様子を見せていた彼らも休憩時間の20分間ずっとストーリーについてや魔法の不思議に語り合っている様子に、思わず口元が緩んだ。
二幕(後半)で舞台装置トラブルがあり、ショーストップがあったものの、再開のアナウンスに会場から湧いた拍手のなかには、彼らのものもたくさん含まれていた。
ハリー・ポッターの母国イギリスでは演劇鑑賞は日常のなかにあり、老若男女がさまざまな演劇を楽しんでいるという。日本でも演劇を教育に組み込む動きが始まっているが、舞台ハリー・ポッターで彼らが感じたものはその大きな一歩になっただろう。
どこまでも役を落とし込む。
昨年から二年目の登壇で、より深く、ハリーという人物を立体的に演じてくださる竜也さんがいた。
昨年と比較してではなく、毎公演、すべての瞬間において違う表情を見せ、さまざまな感情を掻き立てられる。
アルバスへの愛情と過去の傷に激昂し、
あふれる涙の美しさ。
ぬぐい去れない悲しみ、孤独から震える唇と吐息。
頭の先からつま先まで、背中からも漂う集中力。
言葉の端から漂うハリーらしさには、大人になっても変わらない、子どもの姿が確かに見えていた。
40歳という節目で、これまで演じてこられた役柄、作品とは一味違う、大きな原作があり「アジア初」となる大きな冠の付いた舞台への挑戦。
昨年のプロフェッショナルを観ても感じたことだがまた一歩大きな空へ羽ばたくために、世界へ向かっているのだと強い確信がある。
「舞台の上で死ぬなら本望だ」という言葉を彼は支持しない。
だけれど「芝居をしている瞬間が一番、自分自身でいられる」とも仰る。
竜也さんにとって、芝居をする自体に大きな意味があるのではなく、
自分に鏡を向ける時間であり、苦しくもやめられないもの、なのかな。
言い切ることはできないし、したくないけれど、
今年6月にハリー・ポッターのカムバックをする前から稽古に向き合っておられた舞台の詳細がついに発表された。
演劇人、藤原竜也の真骨頂。
歌舞伎役者、待ってました……!!
それもかねてよりご縁の深い中村屋さんとのお芝居に何より竜也さんご本人が楽しそうで、期待が止まらない。
ハリーとの時間で「自己と向き合い」、
中村仲蔵を生きることで「俺は、芝居がしたい」とはまさに、彼の人生そのものではないか。
26年前 演劇界に生まれ落ちた大輪の花は、
今日も美しく咲き誇る。
その背中をいつまでも
どこまでも追っていきたい。