見出し画像

外国語の会話上達のコスパ良い近道は、実は文法攻略

英会話を苦手とする日本人が多いのは、学校で文法中心の教育を受けて試験のトラウマを抱えているせいだ、と聞くことないですか? 日本語をしゃべる時に文法考えている人いませんよね、だから英語をしゃべるときも文法を意識しない方が良いのです、とか。

それを聞くたびに私は、そうかなぁ、外国語を習う時は、文法から入った方が、効率よく習得できるのではないかなぁ、とつぶやいています。

確かに、母国語を習得する時には、文法を考えていません。生活の中で自然に習得します。でも、毎日起きている間は日本語のシャワーを浴びていても、生まれてから、まともな日本語を習得するまで何年かかっているでしょうか。

もちろん、脳の発達なども関係していると思いますが、言葉を習得する過程を考えて見て下さい。赤ちゃんの時から、私たちは生活の中での行動と共に周りから絶えず言葉が聞こえてきます。

お母さんが「ほら、ご飯ですよ。今日は、○〇ちゃんの好きなもの作ったから、沢山食べてね」とか、「あら、○〇ちゃんの好きな子犬がいるわよ」とか。そんなことを何回も繰り返し聞いて、[〇〇ちゃんの] [好きな] [**] と、それぞれの単語の意味合い、言葉の順序と意味合い、というのを身につけるのだと思います。膨大な時間をそういう環境で過ごして、自然に頭の中で整理して覚えていくのではないでしょうか。

でも限られた時間しかない中で外国語を新たに学ぶとき、上記のような習得の仕方をできるだけ再現しようとするのが本当に一番効果的な方法なのでしょうか。

もちろん、一人一人に合った勉強の仕方って本当に千差万別だと思いますが、私は文法を学ぶのが、外国語を早く習得する効率的な方法と思っています。そこで今日は、その理由と、効率的と思い実践してきた外国語習得法について書きたいと思います。

英語大嫌いの学生が大人になって外国語を2つ習得できた理由

外国語には、私はもともと全く興味がありませんでした。私は日本で生まれ育ち、中学に入って初めて英語に触れました。でも外国にあこがれたこともなく、日常使うこともない言葉はひどく遠い存在でした。暗記力も弱いし、それ以前に単語をひたすら覚える、みたいな勉強を単調で本当につまらなく感じてしまい、英語なんか必要ないのに、といつも思っていました。人前で話すのが苦手で、会話の時間はいつも前の人の陰に隠れていました。

そんな英語大嫌いだった私でも、後になって、英会話学校など通わずに米大学院にも留学し、米国アナリスト資格試験も合格し、日本語の一切使えない環境で仕事もしてきました。それぞれの段階で努力しましたが、やはり, あることから思い立って中学から高校までの英文法を一覧したのが、後に外国語習得の基盤になったと思います。

50才の時にはフランス語を一から始め、その6年後にはフランス語検定試験のDELF B2に受かりました。6年間といっても、その内の3年近くは全くフランス語に触れる機会はありませんでした。一から始めて、最初の8カ月は一日3時間の勉強を週5日しましたが、中断の後、残りの2年余りは仕事をしながら勉強時間は週に2時間程度がやっとでした。

DELF B2のレベルはフランスの大学に願書を出すときに必要な語学力となっています。受かったと言っても、試験運によるところが大きくて、その実力はないとは実感していますが、割いた時間の割には早く上達できたのではないかと思います。

日本語と英語との距離と比べて、英語とフランス語の距離はずっと近いので、英語を学んでからフランス語を習得するのは比較的たやすいと言います。確かにそうですが、私は英語を習得するのには文法から入るのが効率的と体験したので、フランス語には最初から戦略的にその方法でアプローチしたのも功を奏したと感じています。

簡単な文法の本を一冊買ってきて、最初に全部読みました。そういう風にフランス語の骨格を知ってから、会話や少し複雑な文などに触れるようにしたので、頭に入りやすかったと思います。

文法、文法、と書いてきましたが、文の構造と言った方が良いかも知れません。外国語の骨格をとらえて、文の各要素をブロックのように、まとまり毎に頭の中に整理しておくと、必要に応じて取り出しやすい。そんなイメージです。

社会人一年生で学んだ新しい業務の覚え方

ここで少し話は逸れますが、なぜ骨格や全体像をとらえると物が学びやすくなるのか、の例となるエピソードを書きたいと思います。

私は大学卒業と同時に銀行に就職しましたが、最初に配属されたのは営業部でした。その頃、銀行業務のオンライン化というのが進みつつあり、営業部にも自行開発のコンピューター端末が置いてありました。一台が勉強机位の大きさで、天板に当たるところにボタンがたくさん並んでいました。

私はその前に座り、隣の先輩から回される伝票の内容をその端末に打ち込む仕事を与えられました。先輩が、端末への打ちこみ方を教えてくださいます。私の方は、その端末がどういうメカニズムでできているのか、一つ一つの伝票が何を意味するのか、全く予備知識のない新入行員でした。

カウンターの前には、沢山のお客様が待っていらっしゃいます。先輩は自分の業務をしながら私も教えなければならないので、大忙しです。質問したり、同じことをくり返し聞ける雰囲気ではありません。「はい、これは、このボタン、次はこのボタン、〇×#%&$*。。。。」と早口で言われるままボタンを打ちまくり、先輩が次の伝票にとりかかっている十数秒の間に、必死でメモを取って対応していました。

何日間かそういう日々を過ごしたある日、その先輩がお休みで、別の先輩に教えていただくことがありました。メモをチラ見しながら「〇×#%&$*。。。。」と懸命に端末を叩いていると、その先輩に声をかけられました。そして、ここの業務には大分類、中分類、小分類があり、端末のボタンはそれに対応していると教えてくださいました(細かい分類は覚えていないので、ここはイメージで書いています)。

はぁ~!そうだったのか!とその時初めて、私は自分がどんな仕事をしているのか分かりました。大分類、中分類、小分類、それぞれに10種類の違う処理が必要なら、大分類10+中分類10+小分類10=30種類の処理の仕方を覚えれば、後は組み合わせです。10×10×10=1000通りの処理を覚える必要はないのです。

その時から、私の業務処理能力は飛躍的にアップしました。全体像を把握する、物事の共通点や相違点などを整理しながら覚える。日常生活で、皆さんは意識しなくても実行されていると思います。

ところが言葉というのは全体像の幅も奥行きも、この銀行の一台の端末とは桁違いの広さ、深さがあります。また、外国語学習の際は、まずは雰囲気に慣れるということに強い焦点が当たり、教材となる会話シーンには、ありそうな場面設定にするため多くの種類の文が組み込まれているように思います。

それで頭の中にランダムに会話文や言葉が入って来る。その状態では、一つのことに対応するのに一つの在庫しか使えない。応用が利かないので、自分の言いたいことを何でも言えるようになるまでには、相当の時間がかかるのです。結局、挨拶や旅先で使う程度以上のことが言えるようになる前に、習うこと自体に飽きてしまうケースが結構あるように私には思えるのです。

言葉の整理ブロック

全体像を見ながら、骨格を整理していく。簡単なところから、例を挙げてみます。

① I  [see]  my brother.

例えばI see my brother in the room. 双眼鏡を見ていて、隣の人が「何が見える?」と聞いた時に、「部屋に弟が(いるのが)見える」と答える。そんな感じです。

② I  [am going to]  see my brother.
③ I  [will]   see my brother.

ここで、[am going to] と [will] は交換可能なパーツで、どちらも未来を表す文を作るのに使うけど、ちょっと意味合いの違いなんかを考えて場面を想像してみてくださいね。

④ I  [saw]  my brother.
⑤ I  [have seen]  my brother.
⑥ I  [had seen]   my brother.

[saw]   [have seen]  [had seen] は時間の流れの中で、それぞれ違う位置にある出来事を表すので、比較しながら交換パーツとして整理すると頭に収まりやすくないですか? [saw] は過去のある時点での出来事を表していて、[have seen]となると、今までに起こったことが今、体験としてある、という感覚ですよね。[had seen] は、その感覚が過去のある時点でのもの。

I  [saw]  my brother yesterday.  
昨日、弟を見た。(会った、という意味の場合もありますが)
I  [have seen]  my brother in the room this morning. 
今朝、弟をその部屋で見た。(という記憶がある)
I   [had seen]  my brother in the room before the accident happened.          
事故が起きる前に弟をその部屋で見た(過去に起きた事故の前に、弟を見た)

こんな感じです。

⑦ I  [see]   my brother.
⑧ I  [saw]  my brother.

上は動詞の活用ブロックです。

⑨ I  [will see]  my brother.
⑩ I  [would see]  my brother.
⑪ I  [would have seen]   my brother.

こちらは、willとwouldを使うブロックです。Willは③で見ていますが、このブロックではwouldの使い方と比較して整理します。Wouldはwillの時制変化としても使われますが、意志を表す言葉として使う時、wouldとwillではニュアンスが少し違ってきます。

I  [would see]  my brother if he was here. となると、「弟がここにいれば、会うつもりはあるのだが。。」そんな感じです。

I   [would have seen]   my brother if he had been here.「弟がここにいたなら、会うつもりはあったのだが。。」です。この2つの文は、ブロックとifに続く時制を呼応させています。


ここまで、動作に関係する言い方のブロックを見ていますが、他の色々な要素もブロックで整理すると便利です。こんな風に骨格ができたら、後は単語を入れ替えたり、他のブロックを組み合わせたりして、自由自在に自分の言いたいことを言えるようになります。

少し複雑なことを言う場合も、ブロックをそのまま取り出して重ねることで、文が崩れることなく、相手に伝わりやすくなります。

たとえば、事故が起きたので警察が来て、証言しなければならなかった場面を想像してください。後で誰かに、次のことを言いたいとします。

I said to the police. 警察に言った。
I  [have seen]  my brother in the room this morning.  今朝その部屋で弟を見た。

「今朝その部屋で弟を見たと、警察に言ったんだ」と言いたい場合は、上の2つを組み合わせて、

I said to the police that I   [had seen]  my brother in the room this morning.

said(sayの過去)に続けるので、過去の時点でそれまでに起きたことを言っている訳ですから、[have seen] ブロックを取り出して反応させました。


そんな簡単なこと、とっくに知っているよ。と言わず、もしあなたが手っ取り早く自分の言いたいことを外国語で言えるようになりたいと思っているなら、それがこの記事のテーマだと思い出してくださいね。

大抵の人は中学と高校6年間を使って、ゆっくり一つ一つ英文法を習います。その都度、試験もあって習熟度を確かめながら進みます。でも、長い期間をかけるので、先に習ったことは記憶の底に沈んでしまい、後から習ったことと合わせて全体像が整理した形で出来上がってきません。だから、いろいろなバリエーションをつけた会話の文が、丁々発止で出てこないのではないかと私は思います。

全体的な骨格を把握してから、だんだんと枝葉をつける、という風に、覚えることの優先度を考えて外国語に取組むと効果的と思うのです。

英会話が上達するためのコスパの良い近道

次に、ブロック整理を、英会話スキルの習得に実際どう使ったかを書いていきます。

先に書いたようなブロックを意識しながら、私は英語の文を覚えることにしました。その時はすでに大学も卒業した後でしたが、英会話なんて全然できませんでした。

いきさつがあって英語大嫌い人間が大学では英文学科に進みました。実は高校、大学時代は他のことに夢中でしたが、それを放した後、自分の将来について模索しました。自立や働き続けることは私にとって大事なことでしたが、私自身、それで世間に打って出られるようなものは身についていません。嫌いでも英文科卒。その薄い知識の集積を証明する卒業証書以外、何も持ち合わせていなかったのです。これを取り敢えず役に立つレベルにする以外、選択肢はないと思いました。

でも、英会話スクールに通っても、例えば、週2回ずつ、1回1時間英会話の授業を受けたとしても、1年後に話せるようになっているとは思えませんでした。だとしたら、コスパ悪い!と思いました。

そこで、NHKのラジオの中級英会話(中学生程度の内容)のテキストを購入して1年間、毎日出て来るスキット(簡単な会話劇みたいなもの)を丸暗記することにしました。その頃のラジオ中級英会話は、上に挙げたような、英語の骨格を中心にスキットが組まれているように思いました。

1スキットは10行にも満たないくらいでしたし、そういう骨格を意識して読んでいると、想像したより簡単に覚えられました。ブロック毎に整理して頭に入れておくと、記憶の定着率も良かったです。

後は、勉強しようという動機づけのために、英語でのディスカッションのクラスに週一回通いました。ネイティブの先生が話を誘導されます。入試みたいなのがなかったのを幸いに、まだほとんど話せもしない内からそこに潜り込んで、刺激をもらいました。

そうして1年も経つと、自分の言いたいことは大体言えるようになっていました。そこから英検一級に合格しました。後年に留学を考えた時にも、言葉のレベルはクリアできました。

聴く力がついてくるのは最後になりました。でも、何とか自分の言いたいことは伝えられるので、留学した時は、授業で分からないことがあれば、教授室まで行って質問することができました。教室ではスピードについて行けなかったところも、1対1で話してもらえれば分かりやすかったです。そうして、また次につながって行きました。

あなたにとって最適な外国語習得は?

今でも、私は語学が得意ではありません。語学が得意でないのに20代で英語を再勉強すると決めた時も、将来は帰国子女もどんどん増えて来るので私が勉強したって追いつけっこないとは思いました。だから、別の専門分野を持とうと思いました。そうであれば、外国語は、そこそこのレベルでもプラスアルファのスキルとして活きるのでは、と思ったのです。

ある時、お父様の仕事のため幼い時からアメリカで育ち完全なバイリンガルになった友人が、こんなことを教えてくれました。両親が日本人でも、アメリカで育つと自動的にバイリンガルになるわけではない。放っておくと、日本語ができない子になる。週5日現地校に行って英語で勉強し、週末は日本語学校で日本語を学ぶ。人の2倍勉強して、始めてまともなバイリンガルになれる。

そういう観点に立ってみると、必要なトレーニングさえできれば、’語学’習得のためには留学は必ずしも必要ではないとも言えると思います。以前、一度も留学したことはないけれど、大変高度な内容の同時通訳をされるプロにお会いしたこともあります。

また、大学の時、教授がおっしゃったことがあります。「英会話が大事といってもね、話す中身がなかったら会話は続かないんだよ」

仕事の場では、やはり文法もきちんとした言葉を話せる方が、有利です。ちゃんと教育も受けた人だな、だから他のことも、ちゃんとできる人じゃないかな、と思ってもらえます。もちろん、時間の経過とともに、言葉よりも仕事そのものの出来が次第に信頼を醸成していくのですが。

言葉も、文化も、仕事も、遊びでも、何でも知ろうと思えばそれだけの時間がかかります。自分の持っている24時間の中でどういう風に優先順位をつけて、できることの最適なバランスを得るか。そんな発想で、外国語で「自分の言いたいことを言える」レベルに早く到達するには、という観点から実践した方法を書きました。

この記事を書こうと思って、昨日、本屋さんで今のテレビやラジオの英会話テキストはどうなっているか見てきました。スキットの会話文に変化球もかなり混じっているという印象でした。1スキットも長いです。これを使う場合は、毎回全部覚えようと無理をして途中で嫌になってしまうくらいなら、ブロックで整理できる範囲に限定して覚えていくようにするのも良いかも知れないと思いました。

ブロックで頭を整理=>スキットを覚える=>会話実践の場を作る。そういう風に基礎固めをしておくと、留学や仕事で外国語を使う際に、よりスムーズに生活に取り込んで行けるようになると思っています。

あなたにとっての最適な外国語習得って、どんな感じでしょうか。この記事が、何かのご参考になれば嬉しいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?