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バイバイ、子ども服

「どれも、140センチまでかぁ」

子ども服を置くショップで、
ハンガーにかかるTシャツやワンピースについたサイズの数字をパラパラと確認しながら、ため息が出た。


娘の身長はこの夏、140センチをこえた。
これから買う服のサイズは、150センチで探さなければいけない。

これまでずっと使ってきた子ども服の店では、
ほとんどの商品のサイズは、140センチまでだ。

身長とともにグッと大人びてきて、
服の好みもこれまで着ていた服のようにカラフルなものや、
フリルのついたものよりは、
モノトーンのシンプルなものがいいと言うようになってきた。

もうないのだ。
150センチで、シンプルな服。
そんな服は子ども服には、もうない。
存在しても、
供給より需要の方がずっと多いせいか、
すぐに売り切れてしまう。


7月。
夏の旅行に向けて、持って行く服が足りなかった。
でも、セールや秋服へ移る時期も重なって、
150サイズの夏服が見つからない。

もうどうしようもないからと思って、
ためしに、
無印良品の大人用のXSサイズを着せてみたら、
違和感がないサイズ感だった。

驚いた。
なんだ、もう大人サイズ着れるんじゃん。

娘本人も、満足したようだ。
むしろ、大人のサイズになったことが、
誇らしいようでニコニコとしている。

そうか。もういいのか。
子ども服の店で躍起になって、
ないサイズの服を探し回らなくても、
もういいのか。

そう思うと、
なんだか体の力が抜けるような感覚になった。


思い返せば、
子ども服のサイズには、
娘が生まれた時から苦労させられた。

生まれた時の身長は、50センチ。
体重は平均より重めだった。

育児書を見て、
50センチの服を用意していた。
季節は晩秋だった。

新生児期の成長は著しい。
退院して1〜2週間もしたら、
手首足首が出て寒そうだった。

これではいかんと、
夜中の授乳中に、
乳を吸う赤子の頭の上でスマホの画面を光らせながら、
60センチの服を買い漁った。


出産祝いで70センチの服をもらったけど、
毎日の世話に追われていて、
60センチが小さくなってきたかな?と思って、
引き出しの奥から70センチの服を引っ張り出してきて着せたら、
もうそれも小さかった。

意味がわからんと思ったけど、
70センチの服は飛び級したようだった。

あわてて、80センチの服を買いに走った。

かと思ったら、
80センチの服は結構長く着られた。
前回の反省を生かして、
早めに90センチの服を準備しておいたけど、
なかなか出番はやってこなかった。

100センチになると、
ベビーというカテゴリの服は着れなくなって、
キッズに移行した。
使えなくなった服屋もあったけど、
そのままただ、キッズラインに移行すればいいだけの店もあった。
赤ちゃんぽさはなくなって、
なんか急にお姉さんになったように気がした。

保育園で、赤ちゃんクラスと一緒に遊んだりしてるのを見ると、
「ちょっと前まで、娘もああだったのにな」
と思って、ちょっと切なくなった。


服は幼児期から、毎年10センチずつサイズアップしていたのだけど、
120センチの服は2年近く着た。

身長の数字の伸びそのものよりも、
服のサイズで成長を実感していたので、
これまで通りにサイズアップしなかった年は、
心配した。

食もなんだか細い時期だったから、
タンパク質やカルシウムが足りてないのかな、
などと悩んだし、摂らせるにはどうしたら?
と、食事のことを考えた。

また翌年からは順調にサイズアップするようになって、すごく安心した。


服のサイズ以外にも、
母と初めて子どもの服を買いに行ったこと、
自分じゃない人間の温度調整をどうやったらいいか分からず悩んだこと、
特定の色の服しか着ない時期があったこと……
子ども服との思い出は、
ここに書き切れないくらいたくさんある。

その経験はまだまだ続いてくと思っていたけれど、
心の準備もなく、
ある日突然おしまいになるんだなあ。


からだはもう、大人と同じ。

私があくせくしなくても、
娘自身が上から下まで好きな服を選んで買う日が、
すぐそこまで来ている。

さみしいけれど、
そろそろ子ども服は卒業だ。

これまで、たくさんお世話になりました。
10年間、すごく楽しかった。
バイバイ、子ども服。

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