ある町の、ある恋人たちの恋の終わり
叶わない夢、癒えない傷、戻れない過去、消えない記憶。そういったものが年齢を重ねるほどに増えていった。始まりがあるものには、いつか終わりが来るということを分かっていても、ぼくらは始めずにはいられなかった。
夢のような時間を過ごして、現実を突きつけられて「これが夢ならいいのに」と願っても、時間は止められないし巻き戻ってもくれない。小さな選択を繰り返していくうちに、いつの間にか遠くに来てしまっていて、対岸からこちらを見つめるきみの表情を何と表現したらいいのかわからなかった。
「こんなはずじゃなかった」何かが終わりを告げるとき、そう思いたくなる。でもどうなるはずだったかなんてことは分かるはずもない。だから「これで良かったんだ」と言い聞かせて、ただ時間が消費されていくのを待つしかなかった。
「好きだよ」という言葉に対して「ありがとう」と答えるのは、きっと期待外れなんだろうけれど、ぼくらの関係はこのあたりで終わりにしなきゃいけないと思ったんだ。
君のことを好きで好きでたまらなかったあの頃は、君がいなきゃ生きていけないと思っていた。だけど終わりを迎える今となっては、君と出会う前の生活にただ戻るだけだと思っている。
君がいない世界を生きていたんだから、君がいなくてもきっと大丈夫。この世界のどこかに君がいると知りながら、ぼくは知らないふりをして生きていく。
たとえ、きみがぼくを忘れてしまったとしても。