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「R」

「R」

※2009年12月発行の同人誌『屋上キングダム』に掲載した小説です。(ヘッダー画像の題字は後藤グミ)

■登場人物佐々岡貴子……猫の飼い主
山崎透…………12年前の中学生
加地眞人………獣医

◆現在(佐々岡貴子) 出窓には、猫がそこにいたくなる「なにか」が備わっているに違いない。
 猫は、今日も出窓のカーテンの向こう側に座って外を眺めている。少し上を向き加減に座る後ろ姿は、物悲しそうにも、凛とし

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教室は水深1.6m 少し背伸びしないと苦しい

教室は水深1.6m 少し背伸びしないと苦しい

「おいしいの?」

 放課後、文庫本を読んでいると、斜め上から声がした。視線を上げると、机に置いてあった黄色い箱を手にとりながら、西田麻衣が見下ろしている。

 おいしいかどうかなんて、考えたこともなかった。キャラメルはキャラメルの味で、それ以上でも以下でもない気がした。そのことをうまく伝える自信がなくて、黙っていた。

「よく食べてるよね。よっぽど好きなんだね」

 (好きだから、ってわけじゃな

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○△□

「○と△と□、どの形がお好きですか?」

電車で隣り合わせた初老の男性が、突然僕に尋ねてきた。

僕はとっさに質問の意味を理解できず、何も答えることができなかった。ただその男の顔を間の抜けた顔をして眺めることしかできなかった。

男はそんな僕を見て、穏やかに微笑んだ。

その笑みは、いたずらっ子のようでもあり、照れくさそうでもあり、戸惑っている僕の様子に満足しているようでもあった。

その顔がとて

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ミックスジュース

ミックスジュース

 いつもの喫茶店の、いつもの席に座って、いつもの窓から、バス停を眺めてる。
 窓から見えるバス停には、ポツポツとバスを待つ人がいる。20分に1本、駅前と海沿いのバスターミナルとを巡回するバスが通る。
 バスが左から走ってきて、少しの時間だけ停まり、また走り出す。その少しの間に、バス停で待ってた人たちが忽然と消えてしまう。
 「手品みたいだな」と思いながら、つい眺めてしまう。

 予備校が終わると、

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old boy

old boy

◆戸倉

 母校のバスケ部OB会に参加したことを、少し後悔をしていた。
 毎年8月にOB会の案内が届く。案内のハガキを眺めながら、夏の体育館を思い出していた。暑くて、息苦しくて、汗臭くて、甘美な場所だった。ドリブルの音、ストップのたびにキュッと鳴る床、顧問の吹く笛、ボールがネットを通過する音。絞ればしずくが落ちるTシャツ、転がるスポーツドリンクのボトル、パスを呼ぶ声。そのときは、そうすることが当た

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